正直なところ、まだまだアナログで行っている業務が多い。
どこに何のデータがあるか、管理しきれていない。
自社のデータ管理には無駄や重複が多い気がする。
社内データ管理の体制を整備したいが、何からすべきかわからない。

そのような方に向けて、本記事では社内データ管理について、わかりやすく解説します。

  • 社内データ管理が必要な理由︰不適切な管理を続けることのリスク
  • 社内データ管理のメリットとデメリット
  • 社内データ管理の流れ

デジタル化を進め、社内データ管理の体制を整えたいとお考えの方はぜひ以下の記事を参考にして、効果的な体制構築にお役立てください。

 

西潤史郎(監修)/データ分析基盤.com編集部

uruos.net/Submarine LLC

データエンジニア/Editor Team

なぜ社内データ管理が必要なのか?

社内データの管理が適切に行われていないと、さまざまなリスクや課題を引き起こします。ここでは、社内データ管理が必要な理由を詳しく解説します。

散在するデータとそのリスク

社内データ管理が必要なのは、データの散在によるリスクを回避するためです。

企業内には膨大なデータが存在しているため、各部署や個々のシステムなどにデータが散在していると、必要な情報を探し出すのに時間がかかります。

加えて、情報の重複や不整合が生じやすくなるため、データ分析の精度も下がり、経営判断を誤るリスクがあります。

データサイロ化による業務効率低下

データサイロ化とは、異なる部署やシステム間でデータが分断され、互いにアクセスできない状態のことです。データサイロ化が起きていると、統合された顧客情報に基づく戦略的なアプローチができず、売上機会を逃します。

例えば、マーケティング部門と営業部門がそれぞれ別の顧客データを保持し、それぞれの部門で噛み合わないアプローチをしてしまう、などです。

必要なデータにアクセスできない以上、データドリブンな意思決定は困難です。

社内データの漏洩・流出の危険性

データの漏洩や流出のリスクを回避するためにも、データ管理体制の整備は重要です。社内の機密情報や顧客データが不正アクセスやサイバー攻撃によって流出すると、信頼の損失や法的な問題を引き起こします。

具体的な対策としては、バックアップやアクセス権の管理、定期的なセキュリティレビューなどのプロセスを整備することが挙げられます。

社内データ管理体制を整え、セキュリティ体制が整うことで、データの漏洩リスクを最小限に抑えることが可能です。

全社的なデータ管理体制の構築

データ管理を担う担当者の選定や、情報の収集や管理まで具体的なプロセスを整備することなど、全社的なデータ管理体制を構築することで、データの一元化が可能です。

データのライフサイクル全体を通じた管理が行いやすくなり、企業全体のデータガバナンスを強化することができます。

社内データ管理のメリットとデメリット

適切なデータ管理を導入することで得られるメリットは多岐にわたります。

ただし、導入によるデメリットもゼロではありません。ここでは、社内データ管理のメリットとデメリットを詳しく見ていきます。

業務の効率化とコスト削減

社内データの一元管理を進めるメリットは、業務が効率化され、コストが削減できることです。

各部署がExcelなどの表計算ソフトを使用して独自にデータ管理すると、データが散在しやすく、情報の検索や整理に時間がかかり、業務の生産性が低下します。また、手作業でのデータ処理が多いと、入力ミスや重複など、ヒューマンエラーが発生します。

システムを使ってデータ管理業務の自動化を進めることで、ヒューマンエラーの発生率も低下し、業務の精度を向上させることが可能です。

情報検索や整理にかかる従業員の工数削減や業務プロセスの改善が進み、最終的にはコスト削減につながります。

意思決定の質の向上

データが整理され、正確かつ最新の状態で利用可能であれば、意思決定者は客観的な根拠に基づいて迅速かつ的確に判断を下すことができます。従来の直感や経験に頼った判断よりも信頼性が高く、ビジネスの方向性をより適切に導くことができます。

例えば、営業データや顧客データが統合されていれば、販売戦略の見直しや新規顧客の開拓が容易になります。さらに、在庫データや生産データがリアルタイムで把握できれば、サプライチェーンの最適化も可能です。

企業全体の視点で状況を把握し、将来の展望を見据えた戦略的な意思決定ができるようになります。

セキュリティとコンプライアンスの強化

ウイルス攻撃によって個人情報などが漏洩する可能性や、書類での情報管理によって書類を紛失するリスクなどがあります。

適切なデータ管理体制を構築することで、アクセス権限の管理やデータの暗号化、使用履歴の監視といったセキュリティ対策を強化できます。

これにより、不正行為の抑止力となり、情報漏洩が発生した場合にも、原因の特定や被害範囲の迅速な特定が可能です。

被害を最小限に抑え、迅速な対応が取れるため、法的リスクの軽減につながります。

データを活用した新しい価値の創出

インターネットが浸透し、顧客の行動履歴が分析できることで、顧客の嗜好など個別のデータを集め行動傾向を分析することができるようになりました。

これらのデータを活用することで、改善点を見つけることや、新しいニーズの発見が可能です。新たなビジネスモデルの開発やサービスの改善が進むことで、競争優位性を高められます。

デメリット:コストに関する考慮

社内データ管理のデメリットとしては、導入や維持にかかるコストです。データ管理システムを導入するには初期投資がかかり、ツールの費用や人的リソースも発生します。

適切に運用するためには、担当者を決めて、社内での管理体制を整えることも大切です。

しかし、現代においては技術の進化により、コストは以前よりも低くなり、ツールの選択肢も増え、多くの企業が手軽に導入できるようになってきました。

また、データ管理の適切な導入により得られる業務効率化や意思決定の質の向上などのメリットは、コストを上回る価値をもたらします。

社内データ管理の流れ

社内データ管理体制を適切に構成するためには、適切なプロセスで進めることが大切です。

1. 目的、目標の設定

データ管理を始めるにあたり、まずは目的と目標の設定が不可欠です。

目的に合わないデータの収集はコスト増加や工数の浪費につながり、データ管理の効率を低下させます。目的を明確にすることで、収集するデータや必要なツールが定まり、具体的なアクションプランを決めることが可能です。

例えば、顧客情報を効率的に扱うためのCRMの導入や、業務効率化を目的としたSFA(営業支援システム)の利用など、最適なツール選定も目的次第で決まります。

2. データのライフサイクル管理計画

データのライフサイクル管理計画とは、データの生成からアーカイブ、最終的な廃棄に至るまでの全プロセスを管理する枠組みのことです。

ライフサイクルが定まることで、データの保持や整理、適切なタイミングでのアーカイブと破棄が体系的に行われます。具体的には、使用頻度は低いが保管が必要なデータは長期的に保存し、不要なデータは定期的に廃棄することが挙げられます。

これらの計画を整えることで、システムの管理コストが下がるだけではなく、セキュリティリスクを減らすことが可能です。

3. システムの選定・構築

目的とライフサイクル計画が定まったら、適切なデータ管理システムの選定と構築を進める必要があります。

システム選定では、収集するデータの種類や目的にあわせて、適切な情報を効率よく集められるプラットフォームを選定します。

例えば、扱うデータ量が変動しやすい中小企業やスタートアップの場合は、従量課金のようにデータ量と費用を調整できるクラウドベースのシステムが適しています。

システム構築においては、セキュリティとデータアクセスの効率化のため、各部門が容易に必要な情報にアクセスできる体制を作ることが重要です。

ビジネスの基本となるデータを適切に管理するマスターデータマネジメントの導入により、データの整合性を保ち、全社的なデータの活用が促進されます。

4. 収集・整理・保存

目的に合わせて情報を過不足なく、正確に集めるプロセスです。

収集するデータの一例です。

データカテゴリ 詳細内容
顧客データ 販売データ:売上高、販売数量、販売地域別データなど。
購買データ:仕入れ先別の購買データ、発注履歴、コスト分析データなど。
在庫データ:在庫数量、入出庫履歴、在庫回転率など。
従業員データ 人事データ:従業員の基本情報、雇用履歴、給与情報、勤怠管理データなど。
研修・スキルデータ:受講した研修履歴、スキル評価、キャリアパスデータなど。
財務データ 会計データ:収支報告書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書など。
予算データ:部門別の予算計画、予実管理データなど。
プロジェクトおよびマーケティングデータ プロジェクト進行状況:タスク管理、リソース配分、予算消化状況など、プロジェクトの進捗を把握するデータ。
リスクと成果分析:プロジェクトリスクの管理や、マーケティングキャンペーンの成果(クリック率やコンバージョン率)を評価するデータ。
顧客セグメンテーションと行動分析:ターゲット顧客の属性や購買傾向に基づくデータで、マーケティング戦略を最適化。
ITインフラデータ システムログ:システムの稼働状況、エラーログ、アクセス履歴など。
セキュリティデータ:アクセス権限管理、セキュリティインシデントの記録、ウイルス対策ソフトのログなど。

 

収集された電子データは、適切なファイル命名規則や分類方法を採用し、データを整理することで、各部署がスムーズかつスピーディに情報を取り出せるようになります。

保存のプロセスでは、セキュリティを考慮した堅牢なストレージを用意し、定期的なバックアップを行います。データの消失や漏洩などのリスクを最小限に抑えることが大切です。

5. データの活用・分析

収集・整理されたデータを分析し、業務効率化や経営判断の質の向上に役立てるプロセスです。

例えば、データ分析を通じて顧客の購買傾向を把握し、ターゲティング精度の向上やマーケティング戦略の最適化が可能になります。顧客を年齢や性別などの属性を細かく整理して、属性ごとに独自のセールやアプローチをすることも可能です。

また、データ分析は経営判断のサポートだけでなく、業務プロセスの改善にも有用です。

データ分析から、時間がかかっている業務や問題が発生しやすい業務を発見することで、業務のワークフローの見直しや、従業員のパフォーマンス向上につながる施策を打ち出せます。

6. データのモニタリングと改善

モニタリングは、データの品質や使用状況を定期的にチェックし、異常や不整合がないかを確認するプロセスです。

データ管理のプロセス全体を見直し、必要に応じてシステムのアップデートやプロセスの最適化を行います。

例えば、新しいデータ分析ツールの導入や、既存システムのパフォーマンス向上を図るための改善策を実施します。

まとめ

社内データ管理の構築は、データドリブンな経営判断を可能にするだけでなく、業務効率の改善や、セキュリティ体制の構築にも役立ちます。

社内データ管理の体制を整え、成果を最大限発揮させるためには、データ収集の目的を明確にし、どのデータをどのように活用するかを定めることが大切です。

まずは、データ管理について現状会社でどのような課題があるか探し出し、目的を定めることからはじめてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

西潤史郎(監修)/データ分析基盤.com編集部

uruos.net/Submarine LLC

データエンジニア/Editor Team