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「AIリテラシーが大事」とは耳にするが、具体的に何をするのかよくわからない。
「AIリテラシー」がどのレベルを指しているのか、イメージがつかない。
学生達や社内の若手人材のために、AIについて学ぶ機会を作りたいと考えている。
そのような方に向けて、AIリテラシーとは何か、重要性や課題、カリキュラム作りのポイントについて解説します。
- なぜAIリテラシーが求められるのか
- 内閣府「AI戦略」におけるリテラシー教育の位置づけ
- 現場の課題
- 効果的なカリキュラム作りのポイント
AIリテラシーについて、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
AIリテラシーとは?
AIリテラシーとは、人工知能(AI)について理解し、安全かつ効果的に活用する能力を指します。
具体的には、以下に分けられます。
- AIについての知識
- AIについて説明できる能力
- AIを使いこなす能力
それぞれについて次で解説します。
AIについての知識
AIでできることは多岐にわたりますが、具体的な例を挙げると以下のようなものがあります。
- 議事録の自動作成
- アイデア出しの壁打ち相手としての利用
- アンケート結果の分析
AIを学ぶ過程では、AIの基本的な仕組みや得意分野・苦手分野の把握、AIを成り立たせている技術である深層学習(DeepLearning)の概要などについての理解も重要です。
AIについて説明できる能力
AIリテラシー教育のもう一つの大事なポイントは、AIについて他の人にわかりやすく説明できる力をつけることです。この能力は、企業や教育機関でのAI導入や活用を促進する上で非常に重要です。
なぜなら、AIがどのようにして決定を下すのかを理解し、その理由や背景を他の人にしっかりと伝えることで、関係者がその技術に対する理解を深め、適切な判断を行えるようになるからです。
AIの能力とその限界を適切に説明し、誤解や不安を軽減することが、社会でのAI活用促進につながるのです。
AIリテラシー教育は技術的な知識だけでなく、技術を社会で活かすための観点も忘れてはなりません。
ChatGPTやその他のAIツールの動作原理を説明する能力は、エンジニアだけではなく、AIツールを使用する営業担当者やバックオフィサーなどにとっても重要な能力だと考えられます。
AIを使いこなす能力
AIリテラシーは技術を日常生活や社会で適切に利活用することにも焦点を当てています。AIは日常業務やさまざまな場面で利用でき、うまく使いこなすことができれば、人間が作業するよりも効率的に業務を処理できます。
たとえば、データサイエンティストがAIを使ってビジネスの課題を解決する方法を学ぶことが含まれます。グループワークや実践的な演習を通じて、AIの利活用方法を身に付けることができます。
また、ChatGPTやGeminiのような生成AIを使ったプロンプトの作成や、AIを適切に組み込む方法を学ぶことも重要です。
AIリテラシー教育の重要性
AIリテラシー教育の重要性は、今日の技術進化の速度と社会におけるAIの影響の広がりを鑑みると、計り知れないものがあります。AIがもたらす可能性を最大限に引き出し、同時にそのリスクを管理するためには、広範な教育が不可欠です。
AIと社会への影響
AI技術は農業から製造業、金融サービスに至るまで、さまざまな分野で革新をもたらしています。
例えば、農業ではAIを利用して、ドローンやセンサーが土壌、気候、作物の健康状態をモニタリングし、適切な施肥、灌漑、収穫時期を最適化することで、収穫量を最大化し、無駄を削減しています。製造業では、AIを活用して生産ラインの監視、自動化された品質管理、予防保全の実施により、生産効率の向上やコスト削減が実現されたり、設計段階でのシミュレーションや材料の最適選択を行い、開発サイクルを短縮し、製品の品質を向上したりしています。金融についてであれば、使用履歴から不正利用を発見する、審査をAIに任せることで、審査負担を軽減するなどの利用が可能です。
AIを使用することで、データ収集やデータを使った解析ができるようになり、業務効率化が大幅に進むほか、AIを使った革新的なサービスが生まれる可能性もあります。
教育の展開
政府は「AI戦略2019」の中で、人々が不安なく自らの意思でAIの恩恵を享受・活用できるよう、デジタル社会の基礎知識(いわゆる「読み・書き・そろばん」的な要素)である「数理・データサイエンス・AI」に関するリテラシーを全ての国民が育むことを目指すとしています。
また、高等教育段階のリテラシー教育として「文理を問わず、全ての大学・高専生(約50万人卒/年)が、課程にて初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得」することが具体目標に設定されました。
参考:内閣府ホームページ「AI戦略 2019」
※「AI戦略」の最新版は2022年版です。参考:内閣府ホームページ「AI戦略 2022」
AIを活かすことのできる、より高度な人材を育成・確保するためには、より広い範囲でより高度な教育が求められています
教育の充実ががもたらす未来
AIリテラシー教育が充実することで、将来にわたって多くの重要な影響をもたらすことが期待されています。
AIに代替されない人材
AIリテラシー教育が充実することで、深い理解とスキルを持った高度な労働力が育成されます。これにより、労働市場での競争力が向上し、企業の生産性も高まります。
また、AIを活用することで新しいアイデアやビジネスモデルが生まれ、イノベーションが加速します。特にデータ分析や自動化の分野で新しいソリューションが開発されることで、さまざまな産業での技術革新が進みます。さらに、AIリテラシーが高い人材が増えることで、国際的なビジネス環境でも優位に立つことができ、経済の成長を支えます。これにより、グローバルな競争力が強化され持続的な発展が期待できます。
このように、AIに代替されず、むしろAIを上手く活用して活躍できる人材を世に送り出すことができるでしょう。
教育の質の向上と社会的公平性
ChatGPTのような生成AIを活用したプロンプト学習や、Excelを使ったデータ分析演習を取り入れることで、実践的なスキルを身に付けることができます。また、統計学や情報リテラシーのカリキュラムを組み込むことで、学生はデータを読み解く能力を高めることができます。
AIリテラシー教育を通じて、全ての人がAIの基本概念や仕組みを理解する機会を持つことで、情報の格差が縮小します。これにより、テクノロジーに対する不安や誤解が解消され、AIの活用が一部の特権的な層に限定されることなく、広く普及します。
AIリテラシー教育の現状と課題
AIリテラシー教育の推進は重要視されていますが、直面している課題もあります。
教材とカリキュラムの不足
AIリテラシー教育について、多くの教育機関で適切な教材が不足しており、カリキュラムが最新の技術動向に追いついていないのが現状です。
現状文部科学省が公表しているガイドラインも禁止や義務付けを行うものではなく、どのような教材が必要なのか、どのような学修目標が定められるかは検討を重ねている段階です。
また、AIの導入方法など、AIリテラシーには、正解がない問題に取り組むこともあります。
教員のスキルとトレーニング
AIリテラシーを教える教員自身のスキルも重要な課題です。
AIの最新の進展を教えるためには、教員が最新の知識を持ち、効果的な教育方法を理解している必要があります。AIを実際に使いこなせているかどうかも重要なポイントです。
しかし、現状教員のAIリテラシーも決して十分ではなく、学校のDX推進が課題解決のポイントになります。DX推進の中でAIをどんどん取り入れることで教員がAIを使う人となり、実務を通じてAIを学ぶことができます。また、教員に向けたセミナーを利用することも有用な方法となります。
教育現場の業務負荷の高さ
AIリテラシー教育を導入する際、教育現場の既存の業務負荷が大きな障壁となることがあります。
現状日本の教員の労働環境は厳しく、残業などの要因により、教員が新たな教材やカリキュラムを取り入れる余力がない可能性もあります。
その場合は、外部委託などを取り入れ、業務負荷を軽減する工夫が必要です。
学生の興味と動機付け
学生がAIリテラシー教育に興味を持ち、積極的に関与するためには、教育内容に関連性があり、興味関心を引くものであることが大切です。
しかし、学生の興味を引く教材の不足や、教育方法の革新が追いつかないことが、学習のモチベーションを低下させる原因となる可能性があります。
AIの活用領域は幅広く、スマホの顔認証システムや、家庭用のお掃除ロボットにも使われています。
身近にAIが使われているということに気づけるようなカリキュラムを作ることが大切です。
さらに、AIは今後どのようなキャリアを歩むとしても大なり小なり関わるスキルとなるため、今学んでおくことの重要性を理解させることも重要です。AIに関する教育を受けていないと、AIを使いこなす後輩たちに簡単に追い抜かれてしまうという危機感を持たせることで、学習へのモチベーションを高めることができます。将来の成功に直結するスキルとして位置づけることで、学生の積極的な関与を促すことができるでしょう。
教育に使用するAIサービスの選定
効果的なAIリテラシー教育を提供するためには、適切なAIサービスの選定が不可欠です。
Excelを使った演習などもできますが、AIツールにはさまざまな種類があり、各ツールの特性に合わせた選定が求められます。
教育機関の中には、必要なAIツールの導入ができないところもあり、学生が実際にAI技術を体験する機会が制限されてしまいます。環境をどのように整備するかが課題となっています。
倫理的・社会的問題への対応
AI技術の発展には、倫理的・社会的な問題も伴います。AIリテラシー教育では、技術の倫理的側面についても学び、AIの利活用において本人が意図せず偏見や差別表現をしてしまうことを避けるための知識や、プライバシー保護の重要性、著作権などについて理解することが求められます。
しかしながら、これらの問題に対処する教材やカリキュラムが不足しているのが現状です。
教育者がAIリテラシーや情報リテラシー、AIの危険性についても学ぶことが求められています。
効果的なカリキュラムのポイント
効果的なAIリテラシー教育カリキュラムを構築するには、学生がAIの基本から社会的な影響まで幅広く理解し、活用できるようにすることが重要です。以下のポイントは、AI教育プログラムの設計において中心となるべき要素です。
AIの基本的な仕組みの理解
AIリテラシー教育の基盤となるのは、AIの仕組みと基本原理の理解です。技術的な知識は必ずしも全員が習得する必要はないものの、最低限「AIがどのように学習するのか」という仕組みを学ぶことが重要です。
AIの実際の利活用例の学習
理論だけでなく、AIが現実の問題解決にどのように応用されているかを学ぶことは、理解を深めるのに不可欠です。
データサイエンティストやエンジニアが実際にどのようにAIを利用しているかのケーススタディや、カスタマーサービスで使用されているチャットボットやスマートフォンやセキュリティシステムでよく見られる顔認証技術など、、さまざまな応用例を教材として取り入れることで、学生はAIの実際の利活用方法を学びます。
問題解決能力の育成
AIリテラシー教育は、単にAIに関する知識を提供するだけでなく、AIを活用した問題解決能力を育成することも目指すべきです。
AIを使った問題解決能力が身につくと、従来の方法では難しかった問題にも新しい視点で取り組むことができるようになります。これにより、従来の業務プロセスの改善や、新しいビジネスモデルの開発など、イノベーションが生まれやすくなります。また、AIを駆使して解決策を見つけ出す能力が身につくため、学生は将来的なキャリアにおいても、技術やツールの進化に左右されない柔軟な力を身につけることができます。
グループワークやプロジェクトベースの課題を通じて、学生がチームで協力し、実際の問題に取り組む機会を提供することが望まれます。
倫理と社会的影響の教育
AI技術の発展には、倫理的・社会的な問題も伴います。
実際、過去に倫理的問題により論争が巻き起こりました。
プライバシー、データの偏り、自動化による雇用への影響など、AIの導入が社会に与える影響を理解し、倫理的かつ社会的に適切に利用するための判断力を養います。
コラボレーションとコミュニケーション
異なる専門分野の人々と効果的に協力し、アイデアを共有できる能力は、AI分野で成功するために不可欠です。
グループワークを通じて、他の学生と協力しながら問題解決に取り組むことで、コミュニケーション能力やチームワークの大切さを学びます。これにより、実際の職場やプロジェクトでの協力的な作業環境に適応できる能力を身に付けます。
継続的な情報の更新
AI技術は日々進化しているため、カリキュラムも定期的に更新する必要があります。
最新の技術動向、ツール、プラットフォームについての最新情報を組み込むことで、学生が常に現代のAI環境に対応できるようにすることが重要です。
まとめ
AIは現在多くの注目を集めており、AIリテラシーの重要性も高まっています。そのため、AIの基礎知識や活用事例を多く学んだ人材をいかにして育成するのかは大きな課題です。
また、現状教育環境でも注目は集まっていますが、教育に関する課題もあります。
AIリテラシーについて理解を深め、カリキュラム作りの参考にしてください。