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データ分析基盤の構築にかかる費用が知りたい。
自社に必要なものは導入しつつ、データ分析基盤の費用を抑えたい。
本記事では、データ分析基盤の構築や運用にかかる費用について、以下の要素から解説します。
- データ分析基盤で考慮すべき費用
- 外部に委託する際のポイント
- コストを抑える方法
データ分析基盤の費用についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
データ分析基盤で考慮すべき費用
データ分析基盤の費用は、採用する手法によって、初期費用と運用費用に違いが出ます。そのため、手法ごとにどのような性質があるか、費用がどう変わるか知っておくことが大切です。
本記事では2024年最新のデータ分析基盤に関する情報をお伝えします。
オンプレミスとクラウドの費用の違い
データ分析基盤の構築において、オンプレミスとクラウドの選択は費用面で大きく影響します。
オンプレミスは、初期投資が高く、自社でのリソースやエンジニアが必要ですが、長期的には運用コストの削減が期待できます。
一方、クラウドは初期コストが低く、データ転送やスケーリングが容易ですが、使用量に応じた費用が発生し続けるため、データ量が増加すればその分コストも上がります。
また、ハイブリッドモデルでは、オンプレミスとクラウドの利点を組み合わせることができます。例えば、重要なデータはオンプレミスで管理し、一部のアプリケーションや拡張性が必要な部分をクラウドで運用することで、コストとパフォーマンスのバランスを取ることが可能です。これにより、ビジネスのニーズに応じて柔軟にデータ基盤を調整できます。
初期費用と運用費用の違い
データ分析基盤の費用は、初期費用と運用費用に分かれ、オンプレミスかクラウドかで費用の内訳が変わります。
初期費用としては、以下の費用が含まれます。
内訳 | 説明 |
ソフトウェアの導入 | データベース、ETLツール、BIダッシュボードなどのソフトウェアライセンス費用が発生します。 |
必要なハードウェア購入 (オンプレミスの場合) |
サーバー、ストレージデバイスなどの物理的なハードウェア購入費用が必要です。 |
クラウドサービスの初期設定費用 (クラウドの場合) |
外注している場合は初期設定費用が発生します。 |
外部のインフラストラクチャ費用 | 外部接続通信のための機器や外部データなど、基盤の整備に関わる費用です。 |
データ統合とETL費用 | 異なるデータソースからデータを収集し、統合・クレンジング・加工するためのETLプロセスに関連する費用です。 |
カスタム開発費用 | 自社特有のニーズに対応するためのカスタムソリューション開発費用です。 |
スタッフのトレーニング費用 | 新しいツールや技術を使用するために、エンジニアやデータサイエンティストへのトレーニング費用がかかります。 |
これらは初回購入時や故障時など、数年単位で発生する費用です。
運用費用は、基盤が稼働し始めた後に発生する継続的なコストで、以下の費用が含まれます。
内訳 | 説明 |
リソース使用費用 | クラウドサービスの使用料、オンプレミスのハードウェア維持費 |
人件費 | データベース管理者やETLエンジニア、データサイエンティストなどの技術スタッフの費用です。 |
継続的なトレーニング費用 | 新しい技術やツールのアップデートに対応するためのトレーニング費用が継続的に発生します。 |
ライセンスとサポートの更新費用 | ソフトウェアのライセンス更新やサポート契約の更新費用です。 |
スケーリング(インフラの拡張)費用 | データ量の増加に伴うリソースの拡張やクラウドのスケールアップに関連する費用です。 |
データセキュリティ対策と法規準拠の維持費用 | セキュリティや法規制対策の状態を監査・維持するための費用です。 |
システムの冗長性と可用性確保費用 | システムの信頼性を高めるための冗長化やバックアップ費用です。 |
その他長期的なコスト | ・費用対効果分析費用: 長期的にシステムの費用対効果を分析するための費用。外部コンサルタントを利用する場合、その費用も含まれます。 ・リソース最適化費用: リソースの無駄を減らし、効率的に運用するための最適化戦略の立案・実施費用。 |
初期費用と運用費用について理解し、適切に計画することが、データ分析基盤導入の成功と持続可能な運用の鍵です。
各企業のビジネスモデルやデータ戦略に基づいて、オンプレミス、クラウド、またはハイブリッドの選択を検討し、適切な方法を採用することが求められます。
外部に委託するときのポイント
データ分析基盤の導入は専門知識が求められるため、構築や運用の一部を外部委託することは多くの企業にとって有効な選択肢となります。委託する際には、慎重な計画とパートナー選びが重要です。コストを最適化し、予算内で高品質なデータ分析基盤を構築、運用するため、委託する際に注意したいポイントを解説します。
隠れたコストの確認
外部に委託する場合、追加費用や変更管理費用はどのようになるのか、事前に確認することが重要です。
プロジェクトの進行中に要件が変わることは珍しくなく、これによる追加作業や変更には通常、追加の費用が発生します。
ただし、これらは見積もりに記載されないことがほとんどのため、委託先との契約では、このような変更が生じた場合の費用計算方法や手続きを明確にしておくことが大切です。
継続的なサポートとメンテナンス契約
サポートやメンテナンスに関する契約を結ぶ際は、どの程度のサポートがあるか、サポート内容に対して費用が適切かを確認しておくことが大切です。具体的には以下の点を確認しておく必要があります。
- サービスの範囲
- 対応時間
- 対応内容
- 将来的なシステムのアップデートや問題解決への対応
また、契約更新時の費用についての予測も重要です。予想していないコストが発生しないよう、初期段階での明確な合意が求められます。例えば、ビジネスが成長し、データ量が増加した場合、どのくらいコストが上がるのかを確認しておきましょう。
内製と外注のバランス
自社での内製とサービス外注をどの程度利用するかは、コストだけでなく、障害発生時の対応力やデータのセキュリティなどに影響します。
一例としては、機密性が求められる重要な部分について内製してデータを厳重に保護し、一方で専門的な技術が必要な分析やデータプラットフォームの構築は専門のベンダーに依頼すること、が考えられます。この判断には自社のリソース、専門知識、および将来的なビジネスの方向性を考慮に入れて判断することが大切です。
コストを抑えるためには?
データ分析基盤に関わるコストを抑えるためには、導入する方法や、サービス、進め方についてよく検討することが大切です。ここでは、データ分析基盤のコストを抑えるための方法について解説します。
初期費用
1. オープンソースの活用
オープンソースとは、プログラムのソースコードを無料で公開しているソフトウェアのことで、初期費用は大幅に抑えられます。多くのデータ分析ツールやプラットフォームには高品質なオープンソースオプションが存在し、ライセンス費用が不要または低コストで利用できます。
例えば、Apache HadoopやElasticsearchなど多くのオープンソースソフトウェアが存在します。これらのオープンソースはデータ収集から分析、ストレージまで幅広い用途に対応しており、カスタマイズが可能です。
2. クラウドサービスの活用
必要なリソースを柔軟に拡張できるクラウドサービスを利用することで、無駄なハードウェア費用を削減できます。
例えば、データレイクとしてAWSのAmazon S3、Google Cloud(GCP)のCloud Storage、Microsoft AzureのAzure Data Lake Storage、データ分析基盤としてGoogle BigQuery、Amazon Redshift、Azure Synapse Analyticsなど、さまざまなサービスがあります。これらのクラウドサービスを利用することで、初期費用を抑え、運用コストの最適化を図ることが可能です。
SnowflakeやTROCCO®︎のように主要クラウドベンダー以外のデータ分析基盤むけSaaSもあります。
クラウドサービスの場合、支払いを使用量に基づく従量課金制を利用でき、データの使用量に応じて、利用料金が調整できます。
3. プロトタイプの導入
データ分析基盤の全面的な導入前にプロトタイプまたはパイロットプロジェクトを実施することで、大規模な投資を行う前にシステムの効果を評価し、必要な調整を行えます。
特にリソース量が適切かどうかの見極めは運用開始まで正確に見積もることは難しく、必要十分な機能がありつつ、余剰な機能やリソースが含まれていないか確認することが大切です。
不必要なデータ容量や機能の導入を避け、データソースの追加など必要に応じて機能や容量を追加することで、より効率的なシステム設計につながります。
4. ハードウェアのリースや中古機器の利用(オンプレミスの場合)
オンプレミス環境の場合、ハードウェアのリースや認定済み中古機器の購入すれば、コスト削減につながります。
これにより、初期の資本費を抑えつつ、必要な計算能力を確保することが可能です。オンプレミスでデータ分析基盤の導入を考えている場合は、検討する余地があるでしょう。
5. インフラの適切な設計
データ分析基盤の初期コストを抑えるためには、インフラの適切な設計が重要です。
既存ツールがある場合は、API連携を使って、連携することで業務効率化が可能か検討しましょう。
また初期段階で担当者と運用体制やリソースについて十分に確認し、必要十分なインフラ環境を整えましょう。運用費用
初期投資後の継続的なコストが運用コストです。運用コストを効率的に管理し削減する方法を以下に解説します。
1. オートスケーリングの活用(クラウドの場合)
クラウドサービスのオートスケーリング機能を活用することで、リソース使用量を調整できます。オートスケーリングとは、データの使用量に応じて、利用する機能や利用料を調整してくれる機能です。
ビジネスが成長した場合には、リソースを増やせ、需要が少なくなった際には縮小することで、不必要なリソースへの出費を抑えられます。
2. リソース使用の継続的な監視と最適化
オートスケーリングが適用できないリソースの場合は、使用状況を継続的に監視し最適化を行います。例えばデータベースの集計クエリ(SQL)最適化やストレージ使用の見直しを行うことで、効率よくシステムを運用できます。このプロセスは、データマートやデータウェアハウスの整理、不要なデータのクレンジングにも役立ちます。
3. 長期契約の割引活用(クラウドの場合)
クラウドプロバイダーの中には、長期契約を結ぶことで割引してくれるサービスもあります。
途中での解約ではコストがかかることが難点ですが、長期的な導入を前提としているのであれば、計画的なコスト削減が可能です。また、長期的なデータ分析プロジェクトでの予算管理が容易になります。
4. 自動化ツールの活用
自動化ツールを使用することで、人件費削減効果が期待できます。例えば、データETLプロセスにはAWS Glue、Google Cloud Dataflow、Azure Data Factoryなどのサービスを使用し、データ分析にはApache Airflow、Databricks、Alteryxなどを活用することで、人手による作業時間を削減し、エンジニアやデータサイエンティストの作業効率を向上させます。これにより、人件費の節約にもつながります。
5. トレーニングとスキル伝達の促進
社内スタッフのトレーニングとスキル向上に投資することで、外部に依存するコストを減らし、長期的には社内での問題解決能力を高めることができます。
特に自社で内製化して管理する場合、体系的に使い方を整理し、作業効率や分析の質を高めるために重要なポイントです。スタッフのスキルが向上することで、新しいBIツールの導入やデータ可視化のスキル向上にも役立ちます。
6. データ管理ポリシーの策定
効果的なデータ管理ポリシーを策定し、データの格納、アクセス、セキュリティを効率的に管理することで、運用コストを削減します。例えば、古いデータや使用頻度の低いデータをアーカイブするために、AWSのAmazon S3 Glacier、Google CloudのColdline Storage、Microsoft AzureのCool Blob Storageなどのサービスを活用することで、ストレージコストを削減できます。また、データの削除ポリシーを導入することも有効です。
これらの戦略を通じて、データ分析基盤の運用コストを効果的に管理し、コストパフォーマンスを最大限に高めることができます。各企業の具体的なニーズに合わせて適用し、持続可能な運用を目指すことが重要です。
まとめ
データ分析基盤は初期費用と運用費用のバランスをみて、適切な取捨選択を行うことで、費用を抑えられます。
しかしそのためには、データ分析基盤の運用目的や構造を整理する必要があり、設計、構築には専門知識がなければ難しいです。
まずは、データ分析の現状や課題を専門家に相談することから、始めてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
西潤史郎(監修)/データ分析基盤.com編集部
uruos.net/Submarine LLC
データエンジニア/Editor Team
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