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デジタル・マーケティングでは、データ分析やインターネット広告・SEO施策に陥りがちですが、リッチなデジタル・タッチポイントを作るには、Webサイト・広告・Eメールの構成や文面に対するテストを通じた、地道な改善活動が欠かせません。 今回は、CRO=コンバージョン率最適化において陥りがちな課題・ベーシックな考え方についてお話しました。
CROは、改善へのネクストステップ
コンバージョン率最適化(CRO)の役割は、Webサイトを改善することで出来るだけ多くのコンバージョンを獲得することです。
改善のためには、売上データやWeb解析データを基にアクションを起こす、「データドリブン」が重要となります。
データドリブンを行う際には、過去のデータを見るだけでは意味がありません。
Webマーケターは、サイトの分析データを基に、トラフィック向上の手段を考え、具体的なアクションを起こす必要があります。ただ、やみくもなアクションでは改善に繋がらない。だからこそ、A/Bテストの実施が重要です。
例えば、ECサイトのコンバージョンがなかなか増えない場合、どこに原因があるのでしょうか。それは、集客だけにフォーカスするなど、偏った施策を行うからです。
コンバージョン増には、
- サイト全体の集客数値
- 商品詳細ページの訪問数
- 商品をカートに入れて決済画面へたどり着いた数値
など、様々なデータを定点観測することで課題を特定する必要があります。
そして、課題を解決する施策を実施し、起こしたアクションによって変化するデータを分析し、次の施策を導き出す。このサイクルが大切です。
「集客強化への偏り」は A/Bテストを失敗に陥れる
コンバージョン率最適化(CRO)を実施する過程で、「集客への意識の偏り」がテストを失敗させる原因になります。
SEOやPPCといった集客強化にフォーカスしてトラフィックを増やしても、商品購入に繋がらなければ意味がありません。集客数とコンバージョン率の向上では、施策の方向性が違うのです。
これは、オンラインとリアル店舗に共通する基本的な考え方です。 デジタルではデータが取りやすいため、ボトルネック解消のためのテストを早い段階で実施して、うまくいかない施策を選別できます。ECサイトは、リアル店舗と比べてもデータ分析をローコストで行えるプラットフォームなのです。
ただし、デジタルで見落としがちなのが「Webサイトがモバイルにもシフトしている」という事実。
つまり、デジタルで行うべきテストはPCサイトだけではなく、モバイルテストやアプリのテスト、アドレベルのテストにEメールのテストと、多くの手段があるということです。
効果的な施策を生むKPIの明確化
例えばECサイトでは、商品ページなどの領域に絞って集客ポイントをテストするのか、サイト内でのユーザーの行動を分析して、コンバージョンに至る部分を明確にするのかなど、フォーカスするポイントによってテストのアプローチも変わります。
トピックごとに見るKPIは、領域ごとに区別した施策が必要です。ネクストアクションへ繋げる指標は多岐にわたるということです。
100ドルの広告で1件のコンバージョンを得ると、コンバージョン単価は100ドルです。コンバージョン率を倍にするならば、投資対価は2倍になります。
領域ごとの指数が明確化されていない状態では、コンバージョン単価が上がってしまう懸念があるということです。
A/Bテストツール『Google optimize』の認知度
『Google optimize』はGoogleが提供するツールで、A/Bテストはもちろん、多変量テストやリダイレクトテストを行え、無料で利用できます。『Google optimize』が無料になった時期から、WebサービスでA/Bテストを利用する人が増えてきました。
しかし、ツールの認知度は一部のマーケターにとどまる印象です。
Webサービスの広告効果は、広告会社からの支持を得ています。しかし、マーケター主体でのサービスとしては定着していない印象です。
CRO 専属リソースの外部化
アメリカではコンバージョン率最適化(CRO)のサービスが多いのですが、比較的新しい分野でもあります。
デジタルマーケティングやWebマーケティングについて、アメリカでは年に1度、コンバージョン率最適化(CRO)に関する調査します。
2017年の調査では、アナリストやマーケティングディレクターなど、約333人を対象としています。その内、コンバージョン率最適化(CRO)に携わるWeb担当者の58%が、2年ほどの実績しかありませんでした。
また、そのほとんどが専属としてのポジションではありません。WebサイトのUX担当者やプロダクトマネージャー、あるいは商品開発や販売に直接関わる人たちがコンバージョン率最適化(CRO)も兼務しているのです。
コンバージョン率最適化(CRO)専門の人の中でも、そのプロセスを体系化しているのは75%ほど。また、属人化から脱却しているのは36%、属人化しながらでも運用できているのが39%という状況です。
コンバージョン率最適化(CRO)を始める時、専属のポストを設けるか否かという判断は難しく、限られたリソースの中ではどうしても兼業という形になります。
外注の線引きをすべき「データの見える化」と「分析」
アメリカのコンバージョン率最適化(CRO)実施は、53%がインハウス、47%が外注している状況です。
コンバージョン率最適化(CRO)の業務は、「データの見える化」と「データ分析」に分けることができますが、この内「データの見える化」は外注しても良い部分でしょう。しかし、「データ分析」に関しては、会社の方向性や目標に直結する重要な要素ですので、外注しきれない部分となります。
外注すべき領域をうまく線引きすることで、効率的なコンバージョン率最適化(CRO)が望めるでしょう。
CROに必要なナレッジとリソース
コンバージョン率最適化(CRO)を実際に行う時、最初に問うべきはハウツーではありません。
まず何を見たいのかが大前提にあって、そこにどのようなナレッジとリソースが必要なのかということです。
具体的には、
- バナーの良し悪し
- フォームの適切な数
- 自由記述にすべきか
- チェックボックスにすべきか
といった部分など、ポイントを明確にすること。ポイントがずれているとネクストアクションに繋がりにくくなります。
何を改善すべきかを明確にすることで、必要なナレッジとリソースが浮かび上がります。
デザイン
バナーの色や形などのクリエイティブナレッジ、UX、動画のポジショニングも重要な要素です。
見た目の良い画面が作成できても、インタラクティブさに欠けるデザインは改善すべきです。
ライティング
コピーライティングでは、文章テストやメッセージングなどの文字の部分は非常にインパクトの強い部分です。
エンジニアリング
テストのセットアップ時に重要なのが、テストコードを書くためのフロントエンドエンジニアのリソースです。
テストを実施するためのデータを扱うアナリストは必要不可欠ですし、商品のリリースサイクルを意識してテストを行うためには、商品ナレッジも必要です。
これは、全ての専門人材が必要だということではありません。各分野に精通するセンスや知識が必要なのです。
1つの組織だけでこれほどのリソースを持っている企業は少ないでしょう。しかし、このようなリソース体制でコンバージョン率最適化(CRO)を実施することが、品質を高めるには理想の体制なのです。
CROのテスト方法と目的
サービスを利用するユーザーのペルソナによって、実施するテストの対象も変化します。
広範囲に渡ったテストをやるべきか、あるいは商品毎などの限定的なテストを実施すべきか。
限られたリソースの中で、コンバージョン率最適化(CRO)を実施するには、目的を軸に明確化した優先順位が必要です。
これが、テスト結果をネクストアクションにつなげる最適な方法といえます。
テストに係る膨大なナレッジ・リソース
テストを実施しなければ、サービスがユーザーに与える価値が理解できず、次のサービスが提案できません。
よりよいサービス商品を開発するために、ユーザー視点とデータ視点、両方を通訳できるポジションの人材がいれば、データドリブンな振り返りテストができます。
しかし、マーケティング、あるいはシステムの片方だけに身を置いてしまうと、双方の改善に最適な指標が理解できなくなるのです。
この問題を解消することがテストを始める目的にもなります。しかし、テストに必要な膨大なナレッジやリソースを目の前にすると戸惑いが生じ、テストを躊躇させるのです。
テストへの必要性と競合への危機感
競合他社がコンバージョン率最適化(CRO)を実施していれば、自分たちもコンバージョン率最適化(CRO)を導入しなければ遅れを取るという感覚がテストを始める動機になります。
競合他社は同じスピード感でサービス改善を実施しているのに、自社ではそのプロセスを実行できていない状況は、焦りを生むのです。
一方、そこに対する危機感が持てない企業は、なぜテストをしなければいけないのかという疑問が出てきます。
つまり、テスト実施に疑問が生じるということは、競合他社との競争意識すら低いレベルの企業であることを証明しているのです。
直帰率が20%改善する「繰り返しテスト」のナレッジ
テストを全く実施していなかった企業に対して、コンバージョン率最適化(CRO)を実施した結果、効果を上げるために必要なのは決められた数のテストではなく、そこで得たナレッジだということが分かりました。
繰り返しのテストで得た経験で打率を上げていくことで、効率の良い仮説を立てられるようになります。
例えば、多くのペルソナにヒットするコンテンツデザインをテストで証明していくと、直帰率が下がっていたということです。
直帰率50%のページを直帰率30%にまで落とすことができ、トラフィックの約2割が直帰しなくなりました。
これに要した期間は計2年間です。1年間でKPIを立て、直帰率にフォーカスし、さらに1年間かけて直帰率が改善しました。
NPSスコアやカスタマーサティスファクションなどのメトリクスも伸び、結果、好感度の上昇はコンバージョンにつながり、直帰率も半減した例だといえます。
学びの蓄積が生み出すネクストアクション
コンバージョン率最適化(CRO)という用語は、最適化という日本語のイメージから「スピード感」を連想させます。
つまり、コンバージョン率最適化(CRO)を行えば、すぐに結果が出るという期待を抱いてしまいがちなのです。
しかし、実際に結果を出すには我慢強くいくつものテストを繰り返し、ネクストアクションを生み出すことが必要です。短期戦ではなく、中長期スパンの目線が、結果に繋がるのです。
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