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最近よくWeb3やDAOについて耳にするが、実際どのような物なのかがよくわからない。
DAOを始めてみたいが、どのような形がいいのかわからない。
そのような方のために、本記事では、世の中で実際に運営されているDAOの事例をご紹介します。
- DAOがなぜ注目されているのか
- DAOの形態(Autonomous DAO、Bureaucratic DAO、CEO DAO)
- 国内外のDAOの事例。運営目的や組織としての特徴
- DAOの作り方
- DAOの課題と将来性
DAOに関心がある方、DAOのビジネスへの活用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
1. DAOの基本概念
まずは、DAOの定義と特徴、メリットについて解説します。
DAOの定義と特徴
DAOとは、Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の頭文字を取った用語で、オンラインで構築される分散型自律組織のことです。ブロックチェーン技術(ブロック単位のデータをチェーンのようにつないで保管する)に基づき、オーナーや管理者なしに運営が成り立つ組織形態となります。
考案者はVitalik Buterin氏で、スマートコントラクト機能を実装したブロックチェーンのイーサリアム(Ethereum)の開発者でもあります。
中心となって管理する人はいませんが、ガバナンストークン(意思決定に関する権利を持つトークン)の保有者は、プロダクト、コミュニティ、意思決定に参加できます。これにより、組織における意思決定の透明性が担保され、意思決定プロセスにおいて遅延を防ぐことが可能に。また、契約の実行と管理を自動化するスマート・コントラクトを活用することで、自律的かつ効率的な組織運営の実現につながります。
DAOのメリット
DAOの最大のメリットは、その民主的な運営構造にあります。ガバナンストークンを購入した人全員が投票権を持つことで、上層部に権力が集中するのを防ぎ、メンバーが組織の方向性や重要な決定に関与することができます。
これによりコミュニティ主導の発展が促進され、各メンバーが目標達成に向けて協同しながら推進できるというわけです。
またDAOは資金調達やアート作品、エコシステムの活性化など、多岐にわたる分野で応用されています。仮想通貨やNFTの台頭により、デジタル・アセットの管理や取引においても、DAOのエコな形態が注目されているのです。
特に、DeFi(分散型金融)やメタバースプロジェクトにおいて、DAOの概念は重要な役割を担っています。
2. DAOの起源と歴史
ここからは、 DAOの起源と歴史について、BitcoinやThe DAOの影響を振り返り、現在までの進化について解説します。
BitcoinとThe DAOの影響
DAOの概念は、仮想通貨であるBitcoinの運営形態に影響を受けて誕生しました。Bitcoinは通貨を発行する中央集権者がおらず、取引の処理や承認はネットワーク参加者同士が行うという、まさに「分散型」で「自律的」なデジタル通貨です。
特に、2016年に設立された「The DAO」は、イーサリアムベースの最初の大規模な実装であり、その後の多くのDAOの構築に影響を与えました。しかし、セキュリティの脆弱性が原因でハッキングされ、ブロックチェーンとDAOのセキュリティに関する議論を生み出してしまいました。
さまざまなDAOの発足と進化
The DAOの事件はありましたが、DAOは多様な形で発展し続けています。分散型金融(DeFi)プロジェクト、アートコレクティブなど、多岐にわたる領域でDAOが設立されています。
NFTやメタバースなどのトレンドもDAO全盛を後押しすることに。DAOは、コミュニティビジネスやデジタルアートの領域において新たな可能性を秘めているからです。
投資家や開発設計者は、ガバナンストークンやスマート・コントラクトを活用し、より民主的で透明性の高いプラットフォームの構築に取り組んでいます。2023年現在、DAOは金融から芸術、社会的なプロジェクトまで、幅広い分野でその存在感は増すばかり。プロジェクトのコンセプトやロードマップに共感して入ってくるメンバーも見られるようになりました。
3. DAOの多様な形態
アメリカの暗号資産取引所Coinbaseの元最高技術責任者であるBalaji Srinivasan氏は、DAOを3つの形態に分類しました。
Autonomous DAO(自律型DAO)
Autonomous DAOは、その名の通り自律的に運営・管理が可能なDAOの形態です。イーサリアムのスマート・コントラクトを中心としたブロックチェーン技術により、人間が介入する工程を減らし、ワークフローを自動化します。
- 自律型DAOでは、トークンホルダー(トークン保有者)が投票を通じて意思決定を行い、組織のルールや方向性を決定
- データの書き換えができないため、透明性と分散型ガバナンスが担保される
DeFiプロジェクトやNFTマーケットプレイスは、この形態のDAOを利用しています。
Bureaucratic DAO(官僚主義型DAO)
Bureaucratic DAOは、伝統的な組織構造に近い形を取ります。この形態のDAOでは、自律型DAOと異なり、官僚的な役割を担う意思決定者が存在し、特定の委員会やサブグループが特定の機能や決定を担います。
- 管理者がいるため、より複雑なプロジェクトや大規模な組織での意思決定において、運営の効率化が期待できる
- 自律型DAOと比べると、ある程度の中央集権的要素が残る
CEO DAO(最高責任者存在型DAO)
CEO DAOは、従来のリーダーとなる最高責任者を取り入れたDAOです。
- 一人または少数のリーダーが重要な意思決定を行い、DAOの方向性を決める
- 迅速な意思決定と強力なリーダーシップが必要なプロジェクトに適している
一方で、最高責任者存在型DAOは、分散型の原則から逸脱する可能性があるため、コミュニティ内で議論となることもあります。
解説してきたDAOの3つの形態は、それぞれのプロジェクトの工程に応じて選択されています。例えば、DAOの初期段階では官僚主義型や最高責任者存在型をとり、徐々にメンバーの主体性にゆだねる自律型に移行するといった具合です。
4. 海外のDAO事例7選
ここからは実際の事例を通して、DAOの幅広い運営形態をご紹介します。まずは、海外の事例を7つ紹介いたします。
- MakerDAO
- BitDAO
- NounsDAO
- PleasrDAO
- Fries DAO
- Ape DAO
- Friends with Benefits
MakerDAO
デンマーク発の「MakerDAO」は、金融サービスの運営を目的に開発されたDAOです。ルーン・クリステンセン(Rune Christensen)氏が発案し、同氏の財団であるメーカー財団によって運用が開始されました。
暗号通貨DaiをDAOで管理するためのコミュニティとして、またプロトコルの開発・維持・運営が目的となるため「プロトコルDAO」に分類されます。またMakerDAOは、分散型のステーブルコインを導入しました。
Daiの取引を自動化するMakerプロトコルと、MKRトークンを持つ人々の分散型コミュニティが管理を担当。2021年にメーカー財団は解散し、完全にDAOへと移行しています。
BitDAO
BitDAOは、仮想通貨の取引を行う金融サービス(DeFi:分散型金融)をDAOで行う仮想通貨取引所のこと。主導しているのは、シンガポールを拠点とするBybit(CEO:ベン・チョウ氏)です。
DAOならではの管理者不在サービスを提供しており、有利な取引をサポートする機能が兼ね備えられています。
例えば、上場前企業の仮想通貨を安い価格で先行購入できる「ローンチパッド」や、上場前の新しい仮想通貨を無料でもらえる「ローンチプール」、高利回りの報酬をもらえる「ステーキング」などがあります。
NounsDAO
NounsDAOは、2021年8月に「Nounders」と呼ばれる10人の創業メンバーによってスタートしたNFTプロジェクトです。
NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、DAO上で取引され、コピーや改ざん不可のデジタルアート作品などに採用されています。
NounsDAOは、ドット絵のNFTアートをオークションで販売することで収益を組織の共同口座に入金していくシステムです。1日1つ自動で生成されており、販売益の使い道は、ガバナンストークンで決定しています。
PleasrDAO
PleasrDAOは、高額のNFTの共同購入のために2021年3月に設立されたDAOです。複数の投資家が始めたDAOで、購入したNFTの価値が上がったタイミングで売却し、メンバー間で利益を分けています。
これまで高額取引を行うことで世界中から注目されてきました。DEX(分散型取引所)のUniswapが作成したNFTは52万5,000ドルで購入。アメリカ国家安全保障局の元局員のNFTについては、540万ドルで落札しました。
Fries DAO
Fries DAOは、Brett Beller氏とBill Lee氏によって、バーガーキングやタコベルのようなファーストフード店の買収を目的としてアメリカで設立されたDAOです。FRIESトークンを持つメンバーがDAOを運営するしくみで、Subwayフランチャイズオーナーをはじめ、賛同するユーザーが増えています。オンラインのDiscord チャンネルを運用しており、そこには4千人以上のメンバーが集まり意見を公開しています。
2022年には、ドミノ・ピザの元副社長であるKoryn Spiroff氏がアドバイザーに参加したことでも話題になりました。
ApeCoin DAO
ApeCoin DAOは、猿の絵が描かれたNFTコレクション「BAYC(Bored Ape Yacht Club)」の公式トークンでもある、仮想通貨「APECoin」を扱う分散型のガバナンス組織です。
非営利団体Ape Foundationが管理しており、アートやゲームイベントなどのコミュニティとして機能しています。
例えば、娯楽分野では、「Benji Bananas」というブロックチェーンゲームでは、獲得したトークンをApeCoinに交換することが可能です。また、Apeブランドのアパレルなどを発表し、現実世界で販売したこともあります。
Friends with Benefits
Friends with Benefitsは、DJ兼企業家のTrevor McFedries氏が立ち上げたコミュニティです。クリエイティブ分野で活躍するアーティストを対象に、実世界と仮想世界の双方でカルチャーの発信を行うプロジェクトとなっています。
Friends with Benefitsの特徴は、興味を持った人が参加申請をし、承認されたら規定数のFWBトークンを購入してメンバーになれることです。メンバーはDiscordにてオンラインで交流しながら、プロジェクトに参加したり、クリエイティブなイベントを作ったりすることができます。
イベントは、オンラインだけでなくオフラインでも開催されており、アメリカだけでなく中国、オーストラリアなどでも参加できます。
5. 国内DAO事例11選
ここからは、日本製のDAO事例を見ていきます。
- Ninja DAO
- 國光DAO
- SUPER SAPIENSS
- 和組DAO
- MZ CLUB
- 山古志DAO
- Roopt DAO
- CryptoBase
- UNCHAIN
- ドットジェイピーDAO化プロジェクト
- HENKAKU Discord Community
国内でDAOを活用したビジネスを検討している方はぜひ参考にしてください。
Ninja DAO
Ninja DAOは、「CryptoNinja(クリプトニンジャ) NFT」という作品のコミュニティで、国内最大級のDAO組織です。人気インフルエンサーのイケハヤ氏によって創設され、同氏とクリエイターのリツ氏がプロデュースしています。
CryptoNinjaのキャラクターは誰でも使用していいことになっているため、コミュニティでは、多様なクリエイター活動が行われていることが魅力です。CryptoNinjaの小説や漫画、YouTubeコンテンツやメタバースゲームの開発などがあり、楽しませてくれます。人気を博しているCryptoNinjaは、TVアニメ化も実現しています。
國光DAO
國光DAO(kunimitsudao)は、ブロックチェーン技術を取り入れた、様々な形で返礼ができるクラウドファンディングサービス「FiNANCiE(フィナンシェ)」にて誕生したDAO組織です。創設者は、クラウドファンディングサービスの運営者であり代表取締役の國光宏尚氏。
「Web3とメタバース界隈で日本発、世界で活躍するユニコーンを増やす」というビジョンのもと、海外市場に向けて発展しています。アバターを使って交流し、買い物などもできる仮想空間であるメタバースやDefiなどWeb3技術をふんだんに活用。Walletをメンバー全員が持っています。
SUPER SAPIENSS
SUPER SAPIENSSは、映画界を先導してきた、映像監督である堤幸彦監督と本広克行監督、佐藤祐市監督が発起人となって始めたDAOプロジェクトです。
日本のエンタメを活性化することを目的にクラウドファンディングサービス「FiNANCiE(フィナンシェ)」のトークンを取り入れ、コミュニティを構築しています。
2022年9月の時点でコミュニティのメンバー数は約3,000人を集め、トークンを発行する形式で累計5,000万円超の支援を獲得しました。
和組DAO
和組DAO(wagumidao、wagumiとも)とは、実業家の小林清剛氏の働きかけで和組というチャットグループからDAOに発展したコミュニティです。Web3を先導するアメリカと比べ、日本はまだ発展途上であるため、日本のWeb3市場を発展させることを目指してスタートしました。。
和組DAOでもメタバースやDeFi、NFTなどの知識を活用しており、日本でのWeb3の発展を目指しながらDiscordにてオンライン勉強会を開いたり、ニュースレターを定期的に発信したりして盛り上がりを見せています。
和組DAOのNFTは「Wagumi Cats」です。このオリジナルNFTを利用したガバナンス投票で意思決定が行われています。
MZ CLUB
MZ CLUBは、実業家の前澤友作氏が立ち上げたWeb3コミュニティです。「Web3で遊ぼう!」と掲げ、ゲームなどの得意分野や好きなことをプロジェクト化したり、一般消費者に物を売ったりするハブとして機能しています。
MZ CLUBの参加者は、トークンを購入したり利用したりしてコミュニティの活発化に寄与。コミュニティは参加者同士のマッチングもできる仕組みで盛り上げています。
山古志DAO
山古志DAOは、新潟県長岡市公認のNFTプロジェクトです。錦鯉をモチーフとしたデジタルアートのNFTであると同時に、「デジタル住民票」という意味合いも兼ね備えています。
山古志村は人口800人のいわゆる限界集落。定住人口にとらわれない「デジタル村民」という概念を生み出し、国内外の仲間との出会いと活動資金を集めることを可能にしました。
デジタル村民になると、地域のプロジェクトに携わったり、支援の意思表明をしたりとさまざまな関わり方が可能に。自律的に地域に貢献する仲間が集まり、地方創生を実現しています。
Roopt 神楽坂 DAO
Roopt 神楽坂 DAOとは、物件を入居者やその他の出資者が運営するDAO型シェアハウスのこと。
学生起業家を対象とし、本人たちがさまざまな提案、意思決定を主体的に挙げることが可能です。
魅力的なスペースにするための運営ルールや掃除・運用の業務委託、費用や資産購入を投票で決めます。トークン所有割合に応じた投票を実施し、DAOに関わる人々の総意で物事を決定。タスク依頼も入居者自身が平等で自由に挙げるため、細かいタスクを取りこぼしません。
CryptoBase
CryptoBaseは、Mirai Institute株式会社と株式会社ガイアックス(gaiax)が共同運営するシェアオフィスです。主にweb3業界の起業家、DAOプロジェクト、NFTアーティストやweb3に興味関心を持つ人々をターゲットとしています。
スペースの提供はもちろん、勉強会やミートアップイベント、ランチなどのイベントも開催。リアルな場での交流を加速させ、業界の裾野を広げるような場所を目指しています。入会にはNFTの購入が必須で、スマートロックやNFTアートギャラリーに活用されているようです。
DAO要素を取り入れた運営母体のため、メンバーの投票によってコミュニティーの運営方法やワークスペースの改善案などを決めます。web3業界を盛り上げる為のタスクを遂行すると報酬としてランチ代や月額料金に利用可能なトークンが発生する仕組みも。
UNCHAIN
UNCHAINは、Discord上にコミュニティを形成するエンジニアのための学習コミュニティです。「LEARN(学習)」「GUILD(共同開発)」「INCUBATE(事業創造)」の3つの価値を提供しています。
学習後に学習証明書としてNFTを発行し、学習履歴を可視化。また、メンバーの質問へ回答するなど学びの貢献に対して、独自のソーシャルトークン「$CHAI(チャイ)」を発行し、学びを活性化させる仕組みを採用しています。
ドットジェイピーDAO化プロジェクト
ドットジェイピーDAO化プロジェクトは、NPO法人ドットジェイピーをDAO化し、運営の促進を試みるプロジェクトです。非営利組織が抱えがちな課題である人材リソース不足やPR・マーケティング不足を補い、社会課題の解決スピードを加速させることが期待されています。
700名程度の大学生が中心となって活動しており、活動で獲得できるトークンは事業運営に必要な書籍購入費などの経費として消費可能です。協力者にもトークンを配布し、交流イベントへの招待などインセンティブを設定。長期的に運営に協力してもらえる環境を整えています。
HENKAKU Discord Community
HENKAKU Discord Communityは、多様なメンバーがweb3について学ぶDAO的コミュニティです。主催は、かつてマサチューセッツ工科大学 (MIT) の研究所、メディア・ラボの所長を務め、現在は千葉工業大学 変革センターを牽引する伊藤穰一氏。現状はコミュニティが完全に運営をコントロールしている訳ではないため、DAO”的”コミュニティとなっています。
コミュニティ内で、学びのアウトプットやコミュニティへの貢献などのクエストをクリアするとトークンがもらえます。トークンでメンバーシップや、投票、プロジェクトマネジメントをコントロールする仕組みです。リアルイベント「HENKAKU BAR」も開催しており、入場料はトークンで決済されました。
6. DAOを作るには
ここまで国内外のDAO事例をご紹介しましたが、自分でもDAOを構築するにはどうすればよいのでしょうか?本項では、DAOを構築する流れを解説します。
意思決定プロセス・コミュニケーションツールを決める
DAOを設立する最初のステップは、組織全体の設計図を描くことです。DAOの目的やマイルストーンを明確にし、意思決定プロセスとコミュニティの場となるツールを選びましょう。
トークンホルダー(所有者)は投票権を持てるため、DAO内の重要な決定事項に関わることが可能です。ユーザー間のやりとりは、オープンソース型のプラットフォームやDiscordのようなチャットアプリが広く利用されています。
Aragonなどを利用して基盤を構築する
続いて、基盤を構築します。DAOの基盤となる作成・管理機能を持ったツールを選ぶ際には、機能性をよく検討することが大切です。なかでも有名なプラットフォームであるAragonは、誰でも簡単にブロックチェーン上にDAOを生成できるようテンプレートが用意されており便利です。
AragonのようなDAOを構築するためのツールには、スマートコントラクトを利用し、自動化されたガバナンスと運営ができる機能があらかじめ組み込まれているため、取り組みやすいのがメリットです。
投票管理システムを設定する
ツールを選択したら、DAOの構築に際して重要な投票管理システムを設定します。トークンホルダーが投票システムを介して投票することで、組織内の意思決定に関われるメリットがあります。
例えば、ブロックチェーンを使用したオンチェーン型の投票システムでは、投票結果に手を加えることができないため、透明性の高い取引を可能にします。前述のAragonは、オンチェーンの投票機能が搭載されています。
一方、ブロックチェーンを使用しないオフチェーン型のシステムは、投票時にガス代(手数料)がかからないというメリットがあります。オフチェーン型の有名な例としては、Snapshotがあります。
資金調達・資金管理方法を決める
DAOのベースが整ったら、資金調達とその管理方法を決めます。DAOの構築と運営に必要な資金は、クラウドファンディングでの支援や仮想通貨でのトークン、また外部の投資家からの資金調達によって集められます。
また資金の管理は、DAOの継続と成長を左右するため、慎重な計画が重要です。その点、デジタルウォレットやスマートコントラクトによる資金管理システムがあると、資金の流れに関しても透明性が担保されるため、メンバー全体の信頼を維持することができます。
DAOの設立は、ブロックチェーンとスマート・コントラクトの理解、コミュニティのニーズの把握、そして効果的なガバナンス構造の構築が鍵となります。これらの要素を適切に組み合わせることで、強力で持続可能なDAOを創造することが可能です。
DAOの作り方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
7. DAOの課題とセキュリティ問題
前章では、DAOの構築と管理についてみてきましたが、いくつか注意点があります。ここでは、DAOの課題についてみていきましょう。
法的・規制上の問題
DAOが直面する最大の課題の一つは、法的および規制上の問題です。DAOは新しい形態の組織であり、まだ黎明期と言えるため、多くの国や地域ではまだ明確な法的枠組みが存在しません。
今後DAOがさらに普及することになれば、金融やセキュリティに関する規制が必要です。証券法や税法の適用範囲を明確にすることも必要でしょう。
現在日本では金融庁を中心にDAOの運営やトークンの取引に関するガイドラインを提供するなどの動きが見られ始めています。
セキュリティとガバナンスの課題
セキュリティはDAOにとっても重要な課題です。特にDAOを支えるプログラム、スマートコントラクトはハッキングの標的となりやすく、過去には「TheDAO事件」と呼ばれる事例が発生し、大量の資金が盗まれました。これを防ぐためにはセキュリティの専門家による厳格なテストと監査が必要です。
ガバナンスの面では、投票率の低さが課題になることも。公平なガバナンスを実現するためには、適切な投票システムの設計やメンバーへの参加促進などの仕組みづくりが必要になるでしょう。
8. DAOの将来性:今後の展望
メタバースやNFTとともにDAOも注目され始めた昨今。DAOは、ブロックチェーン技術と分散型ガバナンスの進化に伴い、今後さらに重要性を増していくでしょう。
一般層にも普及していくことで、DAOのプロジェクトに多くの投資が集まることが予想されます。それによって、多様な分野で新たなDAOが誕生したり、株式会社ではなくDAOで運営される組織が増加したりする可能性も十分にあるでしょう。テクノロジーの進化によって、より効率的でセキュリティが強いDAOの実現も期待できます。
また、こうしたDAOの発展に伴い、法的枠組みが整備されていけば、DAOはより安定した運営基盤を得られます。DAOによるグローバルなコミュニティ形成によって、より広い視野で問題解決のための戦略立案が行われるようになるでしょう。
9. まとめ
本記事では、DAOの基本概念や国内外の成功事例、DAOを構築する流れを解説しました。
すでに国内外で多くのDAOが生まれていますが、テクノロジーの進化、規制改革、コミュニティの発展によって今後DAOはますます普及することが予想されます。世界中の人々が共通の目的や価値観を共有し、協力する新たなプラットフォームになるでしょう。
DAOによる分散型社会の実現によって、格差が是正される未来の訪れも期待されています。ビジネスへの活用を考えている方は、できるだけ早い段階でDAOを導入するための情報をリサーチし、知識を身につけていきましょう。
この記事を書いた人
Web3のいろは.com / 編集部
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