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Netflixが2025年第3四半期(Q3)の決算を発表し、売上高115.1億ドル(約1.73兆円、1ドル=150円換算)を記録しました。これは前年同期比17.16%増という堅調な成長を示しています。一方、EPS(1株当たり利益)は0.59ドルで、市場予想を0.11ドル下回りましたが、ブラジルの税務問題を除けば営業利益は予測を上回っていたとされています。
広告事業が新たな成長ドライバーに
Netflixの収益構造において、最も注目すべきは広告事業の急成長です。Q3決算では過去最高の広告売上四半期を記録し、2025年には広告収入が倍増する見込みとなっています。主要な収益源は従来のサブスクリプション収入と広告収入ですが、後者の成長率が特に高いことが特徴です。
米国でのアップフロントコミットメントが倍増し、その一部は2025年に、一部は2026年に反映されます。さらに注目すべきは、プログラムマティック広告の成長率がアップフロントよりもさらに高く、将来的な増収への重要なドライバーと位置づけられている点です。
広告主は、Netflixの拡大するスケール、高い注目度とエンゲージメントを持つ視聴者、広告技術スタックの展開による多様なフォーマット、測定、購入方法の拡充、そしてコンテンツスレートの競争優位性に注目しています。Netflix独自の広告スイート(ads suite)の展開により、クライアントフィードバックに基づいた迅速な反復改善が可能になっています。
2026年の優先事項として、広告主が購入しやすくすること、広告主の多様性を高めること、Amazon DSP、日本のAJAなどの需要源の追加、広告フォーマットの反復改善(今四半期後半に広告インタラクティビティを導入予定)が挙げられています。2026年には、より多くの購入方法、ターゲティングとメディアプランニング機能のためのより多くのデータ、AI機能を強化したモジュラー型インタラクティブ広告フォーマット、すべての市場でのより多くの測定機能の開発を継続する計画です。
新事業展開:ゲーム、ライブイベント、ポッドキャスト
Netflixは、ストリーミングサービスを超えたエンターテインメントプラットフォーム化を進めています。TVで友達や家族と一緒にプレイできるNetflix Gamesを発表し、TVとスマートフォンをゲームコントローラーとして使用できるようにしました。Netflixは、ゲームを「ゲーム」という短縮形で呼んでいるが、実際にはより広範な「インタラクティビティ」イニシアチブとして位置づけています。
ゲーム市場は、中国とロシアを除いて、消費者支出で約1,400億ドル(約21兆円)の機会を提供しており、これには広告収入は含まれていません。Netflixは、自社IPに基づく没入型ナラティブゲーム、子供向けゲーム、主流の確立されたタイトル、社会的に魅力的なパーティーゲームを提供しています。
ライブイベントでは、Canelo-Crawford戦が今世紀で最も視聴された男子チャンピオンシップ戦となり、ライブ+1日視聴者数で4,100万人以上を記録し、91カ国でトップ10入りを果たしました。Netflixは、ライブイベントが獲得、会話、そしてリテンションに対して、過大なプラスの影響を持つと信じています。
また、NetflixはSpotifyとビデオ共同独占パートナーシップを締結し、Spotifyのトップポッドキャストのキュレーション選択を確保しました。これにより、メンバーにポップカルチャー、ライフスタイル、スポーツ、トゥルークライムなどのエンターテインメントオプションを提供しています。
NetflixとSpotifyのパートナーシップは、Spotifyの人気動画ポッドキャストをNetflixのプラットフォームで配信するというものです。これにより、Netflixユーザーは映画やドラマだけでなく、スポーツ、ポップカルチャー、ライフスタイル、トゥルークライムなどの幅広いコンテンツを楽しめるようになります。Netflixは、Spotifyが所有する「The Ringer」ネットワーク(「The Bill Simmons Podcast」や「The Rewatchables」など)やSpotify Studios制作の人気番組の厳選された動画版をライブラリに追加します。これらの動画ポッドキャストは、SpotifyとNetflixの両プラットフォームでのみ完全版が視聴可能となり、YouTubeなどの競合他社での完全版配信は制限されます。このパートナーシップは2026年初頭にまず米国で開始され、その後他の市場にも拡大される予定です。
成長基盤と市場ポジション
Netflixは、アドレス可能市場の約7%(消費者支出の観点から)しかカバーしておらず、最大市場ではTV視聴時間の約10%しか占めていません。これは、コア事業において収益性の高い成長の余地が非常に大きいことを示しています。
Q3 2025で、Netflixは米国と英国で記録的なTV視聴シェアを達成しました。米国では8.6%(Nielsenデータ)、英国では9.4%(Barbデータ)のシェアを記録しています。Netflixは、プログラミングの範囲とオファリングの範囲を拡大することでエンゲージメントを成長させており、これはNetflixにとって重要な、そして実証された成長の次元です。
株価動向と投資家の反応
2025年11月21日時点でのNetflixの株価は104.31ドル(約1万5,647円、1ドル=150円換算)です。Seeking AlphaのQuant Ratingでは「Hold」(3.19点)と評価され、評価(Valuation)は「F」、成長(Growth)は「A-」、収益性(Profitability)は「A+」、モメンタム(Momentum)は「B-」、EPS修正(EPS Rev.)は「C-」となっています。
2025年10月22日のQ3決算発表後、Netflixの株価は約7%下落しました。第4四半期の売上予測が市場予想をわずかに上回ったものの、投資家の高い期待には応えられなかったためです。一方、2025年4月21日には、楽観的な年間売上予測が投資家の不安を和らげ、株価は約3%上昇しました。
株価は決算発表や戦略的決定に敏感に反応しており、特に売上予測や成長戦略に関する投資家の期待値が株価動向に大きな影響を与えています。
まとめ
Netflixは、広告事業の急成長、KPop Demon Huntersの世界的成功、新事業展開(ゲーム・ライブイベント・ポッドキャスト)など、多角的な成長戦略を展開しています。一方で、日本市場におけるコンテンツの受容の違いや、投資家の期待値に対する株価の敏感な反応など、課題も見えています。Netflixは、アドレス可能市場の7%しかカバーしておらず、成長の余地は大きいものの、各市場の特性を理解し、適切な戦略を展開することが重要となっています。
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