ビッグテック最前線.com / 編集部

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1. 驚異の「60兆円」突破:Alphabetが示したAI時代の新収益モデル

Alphabetは2025年第4四半期、市場の予想を大きく上回る過去最高の業績を記録しました。四半期収益は1,138億ドル(約17.07兆円)で前年同期比18%増。そして2025年通期の収益は、同社史上初めて4,000億ドル(約60兆円)を突破しました。

純利益の指標となる1株当たり利益(EPS)は2.82ドルと、市場予想の2.64ドルを大きく上回っています。営業利益も前年同期比16%増の359億ドル(約5.39兆円)に達しており、営業利益率は31.6%という高い水準を維持しています。

最高経営責任者(CEO)のスンダー・ピチャイ氏は、今回の決算を「Alphabetにとって途方もない四半期だった」と総括しています。特に最新のAIモデルであるGemini 3(ジェミニ 3)の投入が大きな節目となり、ビジネス全体に強い勢いをもたらしていることを強調しました。

この業績が意味するのは、AIへの巨額投資が単なるコストではなく、既存事業の成長加速と新規事業の収益化に直結し始めているという事実です。

2. 検索体験の変革:AI Modeが牽引するSearchの17%成長

Googleの屋台骨である検索事業(Search)は、AIの台頭によってシェアを奪われるのではないかという懸念を跳ね除け、前年同期比17%増の631億ドル(約9.47兆円)という力強い成長を見せました。

この成長の背景にあるのが、AI Mode(AIモード) と AI Overviews(AIオーバービュー)の本格的な導入です。Googleは第4四半期だけで250以上の製品ローンチを検索分野で実行しました。

特に興味深いのは、ユーザーの行動変化です。米国におけるデータでは、AI Modeを利用するユーザーの1日あたりの検索回数が、導入時から2倍に増加しています。さらに、AI Modeでの質問(クエリ)は従来の検索に比べて 3倍の長さ になっており、より会話に近い形での利用が進んでいます。また、検索の約6分の1が音声や画像といったテキスト以外の形式で行われており、検索という行為そのものが多様化していることが伺えます。

これは、AIが検索を置き換えるのではなく、むしろユーザーがより複雑な情報を探求するための道具として検索を「拡張」していることを示唆しています。

3. Google Cloudが第3の柱へ:受注残36兆円が示すAI需要の爆発

今回の決算で最も成長率が高かったのがGoogle Cloud(グーグル・クラウド)です。収益は前年同期比48%増の177億ドル(約2.66兆円)に達し、年間ベースでの収益規模は700億ドル(約10.5兆円)を超えました。

驚くべきはその利益率の改善です。営業利益は前年同期比154%増の53億ドル(約7,950億円)となり、営業利益率は前年の17.5%から30.1%へと飛躍的に向上しました。

特筆すべきファクトとして以下の点が挙げられます。

  • 受注残(バックログ)の急拡大 :今後収益として計上される予定の契約残高が、前年同期比100%超増の2,400億ドル(約36兆円)に到達。
  • 大型契約の獲得 :10億ドルを超える超大型契約の数が、過去3年間の合計を上回るペースで増えている。

これらの数字は、世界中の企業が自社のデジタルトランスフォーメーションやAI導入の基盤として、Googleのインフラを強く求めていることを裏付けています。

4. Gemini 3の成功と驚異的な「運用コスト78%削減」の舞台裏

AlphabetのAI戦略の中核を担うのが、最新モデルの Gemini 3 Pro です。同社史上最速の採用率を記録しており、前モデル(2.5 Pro)と比較して1日あたりの平均処理トークン数(AIが扱う情報の最小単位)は3倍に増加しました。

ユーザー数も爆発的に増えています。

  • Geminiアプリの月間アクティブユーザー数 :7.5億人に到達(第4四半期だけで1億人増加)。
  • Gemini Enterpriseの有料導入数 :わずか4ヶ月で800万シートを突破。

投資家が注目したのは、この急速な普及と並行して行われた 徹底した効率化 です。Alphabetは2025年を通じて、Geminiの運用コストを 78%削減 することに成功しました。これはモデルの最適化や、ハードウェアの利用率改善によるものです。

さらに、自社内の開発現場でもAIを活用しており、現在Googleのエンジニアが書くコードの約50%がAIエージェントによって生成され、人間がそれをレビューするという体制に移行しています。AIを作る会社自らが、AIによって生産性を劇的に向上させているのです。

5. 27兆円超の巨額投資計画:2026年に向けた「供給不足」への攻め

一方で、市場を驚かせたのは2026年の設備投資(CapEx)計画です。Alphabetは、2026年の投資額を1,750億ドル〜1,850億ドル(約26.25兆円〜27.75兆円)と予測しました。これは2025年の914億ドルから約2倍という、空前絶後の規模です。

なぜこれほどの巨額投資が必要なのでしょうか。その理由は、深刻な 供給不足 にあります。

CEOのピチャイ氏は「AIの計算容量に対する需要が供給を上回っており、2026年を通じて供給制約が続く」との見通しを示しました。データセンターを建てるための土地、電力、そしてサーバー部品のサプライチェーン(供給網)の確保が最優先課題となっています。

投資の内訳は約60%がサーバー、40%がデータセンター設備に向けられる見込みです。市場予想の約18兆円を遥かに上回るこの「27兆円投資」は、AI市場の覇権を握るためのAlphabetの強い覚悟の表れと言えるでしょう。

6. パートナーシップの深化:Appleとの提携が意味するもの

AlphabetのAI技術の優位性を示す象徴的な出来事として、 Appleとの戦略的パートナーシップ が挙げられます。

Appleは、自社の次世代基盤モデルの開発における優先的なクラウドプロバイダーとしてGoogleを選択しました。iPhoneをはじめとするApple製品にGeminiの技術が深く組み込まれていくことは、Alphabetにとって膨大なユーザー接点を確保すると同時に、AI技術における実質的な業界標準(デファクトスタンダード)を勝ち取る大きな一歩となります。

7. 結論:ビジネスパーソンが注目すべき今後の展望

今回の決算は、AIがもはや「将来の期待」ではなく「現在の収益」に変わったことを鮮明に示しました。特に注目すべきは以下の3点です。

  • AI統合による既存事業の再成長 :検索事業のように成熟したビジネスでも、AIによる体験のアップデートにより、さらなる成長余地(拡張局面)が生まれること。
  • 投資と効率化の両立 :巨額の投資を行いながらも、運用コストを78%削減し、自社の生産性をAIで向上させるという、攻めと守りの精緻な管理。
  • 供給制約という新たな壁 :今後の成長のボトルネックは需要ではなく「インフラの供給スピード」に移行していること。

Alphabetの動きは、すべての企業にとっての道標となります。AIをどう自社のサービスに統合し、いかに運用の効率化を進め、そして長期的なインフラ競争にどう備えるか。この「60兆円企業」が示す戦略は、AI時代のビジネスにおける勝利の方程式を提示しているのかもしれません。

皆さんのビジネスにおいても、AIは単なるツールを超え、成長の前提条件となっているのではないでしょうか。Alphabetのこの野心的な投資が、私たちの生活や働き方をどう変えていくのか、今後も目が離せません。

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