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Editor Team

Netflixが、ストリーミングサービスというデジタルプラットフォームを超えて、実空間エンターテインメント事業に本格参入しました。2025年11月、初の常設体験型エンターテインメント施設「Netflix House」をフィラデルフィアのキング・オブ・プルーシア・ショッピングモールにオープンしたのです。

Netflix Houseの開業と規模

Netflix Houseは、10万平方フィート(約9,290平方メートル)という大規模な施設で、Netflixの人気コンテンツをテーマにした没入型体験を提供しています。NetflixのCMOマリアン・リーは、フィラデルフィア地域を「創造性、心、そして深いコミュニティ意識で知られる都市」と評価し、地元の才能によって構築された空間であることを強調しています。

施設は無料で入場・探索可能で、アートインスタレーションやテーマ別のフォトスポットが充実しています。一方で、個別の体験(エスケープルーム、VR体験、ミニゴルフなど)は有料チケット制となっており、新たなビジネスモデルを展開しています。この「無料入場+有料体験」というモデルは、テーマパーク業界では一般的ですが、ストリーミングサービス企業が実空間施設で採用するのは画期的です。

多様なコンテンツ体験

フィラデルフィア拠点では、『ONE PIECE』、『Wednesday』、『Stranger Things』、『Squid Game』、『Love Is Blind』、『KPop Demon Hunters』、『Bridgerton』、『Glass Onion: A Knives Out Mystery』など、多様なNetflixコンテンツをテーマにした体験を提供しています。

具体的な体験としては、『ONE PIECE: Quest for the Devil Fruit』(約1時間、$39から)、『Wednesday: Eve of the Outcasts』(約1時間、$39から)、『Top 9 Mini Golf』(約25分、$15から)、『Netflix Virtuals』(25-45分のオプション、$25から)などが利用可能です。

施設内には、Dolbyシアター、9ホールのミニゴルフコース、Netflix Bitesというフードコート、複数のVR体験、『One Piece』テーマのエスケープルーム、『Wednesday』テーマのアーケード、Netflix House限定の商品を販売するショップなどが設置されています。『Wednesday』の寮の部屋のレプリカや、KPop Demon Huntersのシンガーの等身大のカットアウトなど、写真撮影の機会も無制限に提供されています。

展開計画とビジネスモデル

第2拠点は12月11日にダラスにオープン予定で、『Squid Game: Survive the Trials』(約1時間、$39から)、『Stranger Things: Escape the Dark』(約1時間、$45から)などの体験が提供されます。第3拠点は2027年にラスベガスにオープン予定となっています。

この展開計画は、Netflixが実空間エンターテインメント事業を本格的に展開することを示しています。各拠点で異なるコンテンツ体験を提供することで、リピーターの獲得や、地域ごとの特性を活かした展開が可能になります。

Disneyのテーマパーク市場への挑戦

Disneyのテーマパークが2024年に341.5億ドル(約5.1兆円)の収益を上げたことを踏まえ、Netflixは自社のIPを活用した実空間エンターテインメント事業への参入を本格化しています。Netflix Houseは、Disneyのテーマパークのような大規模な施設ではありませんが、Netflixの強みである多様なコンテンツIPを活用した体験型施設として、新たな市場に参入する試みです。

Netflixの強みは、ストリーミングサービスで培った豊富なコンテンツライブラリと、世界中で人気を博しているIPです。『Stranger Things』、『Squid Game』、『Wednesday』、『ONE PIECE』など、Netflixオリジナルコンテンツは、すでに世界中のファンに愛されています。これらのIPを実空間で体験できる施設は、ファンにとって非常に魅力的なものとなるでしょう。

実空間エンターテインメントへの戦略的意義

Netflix Houseの展開は、Netflixが単なるストリーミングサービス企業から、総合エンターテインメント企業へと進化することを示しています。デジタルプラットフォームで成功したコンテンツを、実空間でも展開することで、新たな収益源を確保し、ファンとの接点を拡大することができます。

また、実空間施設は、コンテンツのプロモーションやマーケティングの場としても機能します。Netflix Houseで体験したコンテンツに興味を持った人が、Netflixのストリーミングサービスに加入する可能性もあります。逆に、Netflixのコンテンツを愛するファンが、Netflix Houseを訪れることで、より深い体験を得ることができます。

今後の展望

Netflix Houseは、Netflixの実空間エンターテインメント事業の第一歩です。フィラデルフィア、ダラス、ラスベガスという3拠点での展開を通じて、ビジネスモデルや体験内容を改善し、将来的にはより多くの拠点への展開も視野に入れていると考えられます。

Netflixのコンテンツの強さが、デジタルプラットフォームを超えて、リアルコンテンツ、リアルエンターテインメントへの広がりを見せています。これは、エンターテインメント産業全体の大きな変化を示すものかもしれません。

まとめ

Netflix Houseの開業は、Netflixがデジタルプラットフォームを超えて、実空間エンターテインメント事業に本格参入することを示しています。10万平方フィートの大規模施設で、多様なNetflixコンテンツをテーマにした没入型体験を提供し、「無料入場+有料体験」という新たなビジネスモデルを展開しています。Disneyのテーマパークが2024年に341.5億ドル(約5.1兆円)の収益を上げた市場に、Netflixが挑戦する形となります。Netflixの強みである豊富なコンテンツIPを活用した実空間施設は、ファンとの新たな接点を創出し、エンターテインメント企業としての進化を示すものとなるでしょう。