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2026年1月6日、米国株式市場で異例の事態が発生しました。フラッシュメモリ・SSD大手のSANDISK(SNDK)の株価が、わずか1セッションで約28%も急騰し、終値は349.63ドル、日中高値は352.00ドルを記録したのです。この急騰の直接的な引き金となったのは、同日に開催されたCES 2026におけるNVIDIAのCEOジェンスン・ファンの基調講演でした。
ジェンスン・ファンが語ったAIストレージ革命
NVIDIAのCEOジェンスン・ファンは、CES 2026の基調講演において、AIワークロードの高速化において高性能SSD(ソリッドステートドライブ)を含むストレージプラットフォームが重要な役割を果たすことを強調しました。特に注目すべきは、AIとの長時間の対話において、コンテキストメモリ(KVキャッシュ)が時間とともに膨大に膨れ上がるという課題への言及でした。
ファンは「明らかに、そのAIと長く会話をすればするほど、そのコンテキストメモリ(KVキャッシュ)は時間とともに膨大に膨れ上がります」と述べ、この課題を解決するために「ラック内に非常に高速なKVキャッシュ・コンテキストメモリストアを持つために、BlueField 4を作成しました」と説明しました。
市場はこれを、AIシステムにおけるフラッシュメモリ需要の直接的なシグナルと解釈し、関連銘柄への買いが殺到したのです。なぜなら、AIトレーニングとAI推論はどちらも膨大な量のデータ移動を生み出すため、処理能力だけでなく、データの効率的な転送も重要であることが認識されたからです。
SANDISK株急騰の4つの要因
1. NVIDIAのCES 2026メッセージによる需要シグナル
NVIDIAの基調講演でAIシステムにおけるストレージコンテンツの増加が強調されたことが、フラッシュメモリやエンタープライズSSDに関係する企業に対する直接的な需要シグナルとして市場に受け止められました。これは単なる技術的な発表ではなく、AI時代におけるストレージ需要の構造的な変化を示すものでした。
2. AIワークロードに最適化された製品戦略
SANDISKは1月初旬、主力SSD製品ライン「Blue」および「Black」シリーズのブランド名を「Sandisk Optimus」シリーズに刷新し、高性能ユースケース向けに新製品を投入することを発表しました。これは単なる名称変更ではなく、AI時代を見据えてSSD事業を成長の核として明確に位置付ける戦略的シグナルとして市場に受け止められました。
3. 堅調な業績と上方修正されたガイダンス
2026年度第1四半期(11月末)では、収益(前期比+21%)、データセンター収益(前期比+26%)ともに堅調な成長を報告しました。収益は23億800万ドル(約3,462億円)で前期比21%増、データセンターの収益は前四半期比26%増(2億1,300万ドルから2億6,900万ドル、約319.5億円から約403.5億円)を記録しました。
さらに、同社は第2四半期の売上高を25億5,000万ドルから26億5,000万ドル(約3,825億円から約3,975億円)、非GAAPベースの1株当たり利益を3.00ドルから3.40ドルと予想しており、市場の期待を高めました。
4. S&P500採用による流動性向上
SANDISKは2025年にウエスタンデジタルから分離独立し、純粋なフラッシュメモリ・SSD企業として取引を開始しました。その後、2025年11月にはS&P500指数に採用されました。これにより、同社を追跡・保有する機関投資家の層が厚くなり、流動性が向上し、大きなテーマが生まれた際に、今回のような株価急騰をより大規模に加速させる土壌が整っていました。
背景にあるメモリ市場の構造変化
SANDISK株急騰の背景には、AI需要によるメモリ・ストレージ市場の構造的な変化があります。
AI企業(OpenAI、Anthropic、Google、Metaなど)が大規模データセンター向けに大量のメモリを購入しているため、世界最大のメモリメーカー(Samsung、SK Hynix、Micron)は、消費者向け製品からAI企業向けのより収益性の高い取引へとリソースをシフトしています。その結果、消費者向けRAMの深刻な不足が発生し、価格が高騰しています。
具体的には、RAM価格は過去数ヶ月で急騰し、一部のPCビルダー向けRAMキットの価格は500%上昇、SSD価格も100%上昇しました。IDCは、このメモリ不足が「2027年まで続く」と予測しています。
驚異的な株価パフォーマンス
SANDISKの株価は、既に驚異的な上昇基調にあります。2026年最初の3営業日で47%余り上昇し、1週間で+43.14%、1ヶ月で+55.07%、6か月で+656.61%という驚異的な上昇を記録しました。特に注目すべきは、2025年4月22日に付けた安値からの上昇率が1080%に達したことです。2026年1月6日には、S&P500種株価指数の構成銘柄で上昇率トップとなり、メモリー・ストレージ関連のウエスタンデジタル、シーゲイト・テクノロジーも2桁の上昇率を記録しました。これは、AIストレージ需要という長期的なストーリーが本格化する兆候として市場に受け止められています。
出典: Bloomberg – サンディスク株、4月安値から1080%上昇
テクニカル分析:買われ過ぎの兆候
一方で、日足テクニカル指標のRSIは86.477で、完全に買われすぎの領域にあります。買われすぎは「明日必ず下落する」という意味ではありませんが、反落や日中の急激な変動の可能性が高まることを意味します。投資家は、強気の長期トレンドを認識しつつも、短期的な高いボラティリティと調整リスクに対して十分な警戒を払う必要があります。
まとめ
NVIDIAのジェンスン・ファンの基調講演が引き起こしたSANDISK株の28%急騰は、単なる投機的な動きではなく、AI時代のデータストレージ需要という確固としたマクロトレンドを背景に、明確な業績向上と企業戦略が評価された結果です。AIシステムにおけるストレージ需要の重要性が認識される中で、SANDISKのような純粋なフラッシュメモリ・SSD企業への投資家の関心が高まっています。
しかし、この急騰の背景には、AI企業が大量のメモリを購入する中で、消費者向けRAMが深刻な不足に陥り、価格が高騰しているという構造的な変化が隠れています。今後、AIストレージ革命は、私たちの日常生活にも大きな影響をもたらす可能性があります。投資家は、長期的なストーリーと短期的な値動きのバランスを取る視点が重要です。
この記事を書いた人
ビッグテック最前線.com / 編集部
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