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最近耳にする「DAO」や「ガバナンストークン」について知りたい。
DAOを作ろうと考えているので、ガバナンストークンについて学びたい。
そのような方に、本記事ではガバナンストークンの基本から、ビジネスやプロジェクトにDAOを導入する場合のトークン設計のポイントまで解説いたします。
- ガバナンストークンとDAOとの関係
- ガバナンストークンを保有するメリット・デメリット
- ガバナンストークンの具体例(MKR、UNI、AAVE、APE、TRX)
- ガバナンストークンの取得方法
- DAOをビジネスへ活かすためのポイント
ガバナンストークンについて知りたい方は、ぜひ本記事をお役立てください。
この記事の目次
ガバナンストークンとは?
ガバナンストークンとは、DAO(分散型自律組織)内での意思決定権を示すためのトークンのことを指します。
そもそもトークンとは、仮想通貨のブロックチェーン(blockchain)システムを間借りする形で発行される暗号資産のことです。改ざんされにくく、保有者(ホルダー)を証明できるため、電子証票として用いられます。
目的や用途によって、ユーティリティトークン(特定のコミュニティで利用可能なトークン)、セキュリティトークン(デジタル有価証券)、NFT(代替不可能なデジタルデータ)などに分類されます。
ガバナンストークンはDAOにより発行され、保有者はコミュニティの参加権や投票権など、DAOのガバナンスに関係する特定の権限を得ることができます。
DAO(分散型自律組織)について
DAOとは、Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の略語です。DAOはブロックチェーンを基盤とした民主的な意思決定により運営される組織で、近年注目を集めています。
上層部のリーダーや管理者によるトップダウン式ではなく、運営方針などの意思決定をコミュニティ参加者の多数決に委ねる点が特徴です。民主的かつ自律的な運営が可能な、新しい組織形態とされています。
ガバナンストークンは、DAOの民主制を保つために重要な役割を果たします。
たとえば、DAO内のコミュニケーションに用いられるDiscordサーバーへの参加要件として、ガバナンストークンや指定のNFTの保有が求められることがあります。
また、ガバナンストークンは投票権としてDAO内での意思決定にも用いられます。ガバナンストークン1単位が1票に相当するとみなされ、参加者はトークンの投票を通じて運営方針やプロジェクトの進行に関する重要な決定に関与できます。この仕組みが、中央集権的な組織構造から離れたコミュニティ主導の組織運営を可能としているのです。
株式との違い
株式とガバナンストークンの主な違いは、所有権の概念にあります。
株式は企業・組織自体の所有権や支配権の一部を表し、株式を多く保有している者が大きな議決権を持っています。
一方、ガバナンストークンで重視されるのは、金融的価値を超えたコミュニティ参加と組織内の民主的な意思決定プロセスへの関わりです。ガバナンストークンの保有者は、投票を通じてDAOの将来の方向性に影響を与えることができますが、保有量が多い人物がDAO自体を所有したり、代表や管理者になったりするということはありません。
DAOについては以下の記事でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
ガバナンストークンを保有するメリット
ガバナンストークンを保有するメリットをご紹介します。
DAOプロジェクトの意思決定に関わることができる
ガバナンストークンを保有すると、DAOプロジェクトの中核となる意思決定プロセスへの直接的な関与が可能になります。
ガバナンストークンを持つことで、プロジェクトの方向性、資金配分、その他重要な運営方針に対して投票する権利を得られます。例えば、DAOの運営するゲームのユーザーが、ガバナンストークンを取得することで自分の意見を組織運営に反映できるというのは魅力です。誰もが投票権を得ることで、分散型の民主的なプロセスを実現しています。
なお、投票権を第三者に委任することも可能です。
インセンティブを受けられることがある
多くのDAOでは、貢献度や参加の活発さに応じてインセンティブを付与される場合があります。これらのインセンティブはトークンの形で提供されることが多く、プロジェクトへの貢献が直接的な報酬に繋がるシステムです。株式でいう、株主優待や配当に近いと言えるでしょう。
インセンティブの形態は多様で、ステーキング報酬、トランザクション手数料の分配、あるいは特定のサービスへのアクセス権といったものが含まれます。インセンティブを得られるなど使い道が多いガバナンストークンは人気が高くなる傾向があります。
発行上限が設定されているため価値が上昇する可能性がある
ガバナンストークンでは、発行数の制限が価値の上昇につながることがあります。供給量が限られる中でDAO内でのトークンの重要性が増すと、市場での需要が高まります。これは、仮想通貨市場における他の資産と同様に、希少性が価値の重要な要素となることを意味します。
価格高騰を予測して早期にガバナンストークンを保有しておくことで、将来売却による利益を得ることも可能になります。
ガバナンストークンを保有することは、DAOの未来に直接影響を与えることができるだけでなく、長期的な投資対象としての価値ももたらします。
ガバナンストークンを保有するデメリット
ガバナンストークン設計によっては、価格が非常に不安定になる可能性があります。特に、ロックアップ(流通の凍結)解除後にトークンの設計や市場での流通量が増加することにより、価格のボラティリティが高まることがあります。
このような市場価格の変動は、投資家にとって大きなリスクとなり得ます。例えば、市場に流通するトークンの量が急激に増加した場合、供給過剰により価格が急落します。
投資家は各トークンの特徴と暴落のリスクを理解して、動向を予想しながら慎重に投資する必要があります。
ガバナンストークンの課題
ガバナンストークンには次のような課題があります。
- 意思決定に時間がかかる場合がある
- 保有量が多い人に権力が集中する可能性がある
これらの課題は、ガバナンストークン自体の課題というよりは、DAOという仕組み・概念についての課題とも言えるものです。
意思決定に時間がかかる場合がある
ガバナンストークンの課題のひとつは、投票による意思決定に時間がかかる場合がある点です。
DAOでは、全ての重要な決定がコミュニティのメンバーによる投票を通じて行われます。そのため、投票を集めるのに時間がかかることがあります。特に緊急性が求められる決定においては、このプロセスがマイナスとなる可能性があります。
保有量が多い人に権力が集中する可能性がある
保有量が多いメンバーに権力が集中してしまう可能性も指摘されています。
ガバナンストークンの保有量が投票権の重さに直接影響を及ぼすため、トークンを多く保有する個人やグループが過度に大きな影響力を持つことになります。理論上は分散型であるべきDAOのガバナンスにおいて、事実上の中央集権化が進む恐れがあります。
DAOおよびガバナンストークンのシステム設計では、慎重なバランスが求められます。意思決定の迅速性と公平性のバランスを取りながら、すべての参加者の影響力を平等にする工夫が必要です。
これらの課題に対処するための解決策として、投票権のキャップ設定や、緊急性の高い決定に対する迅速な対応プロセスの導入などが考えられます。
具体的なガバナンストークンの銘柄
具体的なガバナンストークンの銘柄をご紹介します。
以下の記事でこれらのガバナンストークンが使用されているDAOについても詳しくご紹介していますので、併せてご確認ください。
MKR
項目 | 説明 |
運営・発行元 | MakerDAO |
国内の取り扱い | あり |
運営公式URL | https://makerdao.com/ja/ |
MKR(メイカー)はデンマーク発の「MakerDAO」のガバナンストークンです。MakerDAOはステーブルコイン「Dai(ダイ)」のレンディングプラットフォーム「Oasis.app」を運営・管理しています。代表的なDeFi(分散型金融)といえます。MKRの保有者は、MakerDAOでの意思決定に関する事案への投票権を得ることができます。
UNI
項目 | 説明 |
運営・発行元 | Uniswap |
国内の取り扱い | なし |
運営公式URL | https://uniswap.org/ |
UNI(ユニ)は世界最大のDEX(分散型取引所)である「Uniswap(ユニスワップ)」のガバナンストークンです。時価総額は1.2兆円を超えています(2024年4月現在)。
UniswapではDAOによって意思決定がされています。UNIの保有者はUniswapでの投票権を得るとともに、仮想通貨をプールに預ける流動性マイニングによる報酬を受け取ることもできます。
AAVE
項目 | 説明 |
運営・発行元 | Aave |
国内の取り扱い | なし |
運営公式URL | https://aave.com/ |
AAVE(アーベ)はレンディングプロトコル「Aave(アーベ)」のガバナンストークンです。レンディングとは、仮想通貨の貸し借りを指します。レンディングにより、仮想通貨を貸し出す側は利益を得ることができます。
AAVEはレンディングサービスの利用者にインセンティブとして配布もされています。AAVEの保有者はAaveの運営に関わる投票権を得ることができます。
APE
項目 | 説明 |
運営・発行元 | ApeCoin DAO |
国内の取り扱い | あり |
運営公式URL | https://apecoin.com/ |
APE(エイプ)はApeCoin DAO(エイプコインDAO)のガバナンストークンです。ApeCoin DAOはアートやゲームイベントなどのコミュニティで、非営利団体のApe Foundationが運営しています。
猿が描かれたNFTコレクションであるBAYC(Bored Ape Yacht Club)の公式トークンでもあります。
TRX
項目 | 説明 |
運営・発行元 | TRON DAO |
国内の取り扱い | あり |
運営公式URL | https://trondao.org/ |
TRX(トロン)は、元々トロン財団が運営・管理を主導していた暗号資産です。2022年7月にトロン財団が解散したあとは、トロンDAOにより運営が引き継がれました。TRXは音楽、動画配信が可能なTRONプラットフォームで、投げ銭のように使用することも可能です。また、TRONプラットフォーム上では暗号資産として取引も行われています。
その他
有名なその他のトークンもご紹介します。DAOのガバナンストークンではないものも含まれますが、コミュニティ内で利用されるトークンの事例として、参考までにご覧ください。
■AXS(アクシーインフィニティ):
NFTゲーム「Axie Infinity」のトークンです。Axie Infinityはゲーム内で倒したモンスターを他のモンスターと戦わせることができるゲームです。その対戦によって報酬としてAXSが手に入り、アイテムなどと交換できます。手に入れたモンスターやアイテムはNFT化されているため、OpenSea(オープンシー)などでの取引も可能です。
■GMT(グリーンメタバーストークン ):
NFTゲーム「STEPN(ステップン)」のトークンです。GSTはSTEPN内でNFTスニーカーなどのアイテムを購入するために使用されます。利用者が歩いたり、ランニングしたりした報酬としてGSTを獲得できます。獲得したGSTはGMTやSOL(ソラナ)と交換できます。
■CNGT(クリプトニンジャトークン):
Ninja DAOのガバナンストークンです。Ninja DAOはNFTを活動の中心にしており、キャラクターブランド「CryptoNinja(クリプトニンジャ)」のアニメ化やゲーム開発を行っています。
ガバナンストークンの取得方法
ガバナンストークンの取得方法は主に2つあります。
- 上場銘柄を取得
- IEO・IDOで取得
上場銘柄を取得
多くのDAOがガバナンストークンを取引所に上場させています。上場している銘柄は仮想通貨取引所で購入することができるため、投資家にとって比較的購入しやすい方法です。
このプロセスは、他の仮想通貨の購入方法と非常に似ており、Metamask(メタマスク)やその他の仮想通貨Wallet(ウォレット)を介して行われることが一般的です。
ただし、日本国内の取引所で扱っている銘柄はまだまだ少なく、海外の取引所を利用する必要があります。
海外を拠点とする取引所でも、日本語サポートに対応しているBybit(バイビット)やBinance(バイナンス)のようなサービスもあります。
◆海外の取引所でのガバナンストークンの買い方
- 日本の取引所でビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(eth)などの仮想通貨を購入する。
- 海外の取引所に購入した仮想通貨を送金する。
- 送金した仮想通貨を利用してガバナンストークンを購入。
IEO・IDOで取得
IEO(Initial Exchange Offering)やIDO(Initial DEX Offering)を通じて、プロジェクトが上場する前にガバナンストークンを購入することもできます。
投資に詳しい方には、IPO(新規上場株式)の仮想通貨版というと分かりやすいのではないでしょうか。
IEO、IDOそれぞれの特徴は以下の通りです。
- IEO:中央集権型の仮想通貨取引所が主導する資金調達方法。審査を通過したトークンのみ扱われているので扱われているトークンの信用度が高い。
- IDO:分散型取引所(DEX)を通じて行われる資金調達方法。審査がないため、仮想通貨の発行体(DAOなど)にとってはスムーズに発行開始できるというメリットがある。
IEOやIDOを利用すると、新しいプロジェクトに早期に関われるというメリットがあります。投資ポートフォリオに多様性を加えたい投資家におすすめです。
上場銘柄を取得するにしろ、IEO、IDOで取得するにしろ、事前にプロジェクトの詳細、将来性、および関連するリスクを十分に調査することが重要です。
ガバナンストークンの取得におすすめの仮想通貨取引所
ガバナンストークンの取得におすすめの、国内の仮想通貨取引所を5つご紹介します。
5件とも金融当局から暗号資産交換業者登録を受けている業者ですので、安心してトレードしていただけます。
■Coincheck(コインチェック):
Coincheckは取り扱い通貨数において国内最大級の仮想通貨取引所です。運営会社のコインチェック株式会社は、東証プライム市場上場起業であるマネックスグループ株式会社のグループ会社である点でも安心して利用できます。
スマホアプリで簡単に取引ができるのも特徴です。
■bitFlyer(ビットフライヤー):
bitFlyer(ビットフライヤー)はビットコイン取引量で国内トップクラスの取引所です。bitFlyerでは通常の取引だけでなく、bitFlyer Crypto CFD での最大 2 倍のレバレッジ取引が可能です。
■GMOコイン:
GMOコインは、GMOインターネットグループであるGMOコイン株式会社が運営する販売所です。豊富な銘柄を扱っており、暗号資産のレバレッジ取引である仮想通貨FXでもビットコインやアルトコインなど複数銘柄を選択可能です。暗号資産だけでなく、米ドル/日本円などの外国為替FXの取り扱いもしています。
■DMM Bitcoin:
DMM Bitcoinはレバレッジ取引が可能な銘柄が国内トップクラスの取引所です。スプレッドを気にせず、ミッド(仲値)価格で売買可能な「BitMatch注文」という独自のシステムを導入しています。問い合わせには365日対応しているため安心感があります。
■bitbank(ビットバンク):
bitbankは取引量では日本トップクラスを誇る取引所です。取り扱っている仮想通貨の銘柄も豊富なため、複数銘柄の取引を行いたい方におすすめです。暗号資産を貸して増やすレンディングサービスも利用できます。
取引所名 | 提供する取引の種類 | 公式サイト |
Coincheck | 現物取引(取引所・販売所) | https://coincheck.com/ja/ |
bitFlyer | 現物取引(販売所・取引所) レバレッジ取引(取引所) |
https://bitflyer.com/ja-jp |
GMOコイン | 現物取引(販売所・取引所) レバレッジ取引(販売所・取引所) |
https://coin.z.com/jp/ |
DMM Bitcoin | 現物取引(販売所・BitMatch注文) レバレッジ取引(販売所・BitMatch注文) |
https://bitcoin.dmm.com/ |
bitbank | 現物取引(販売所・取引所) | https://bitbank.cc/ |
DAOをビジネスへ活かすには
DAOをビジネスに上手く取り入れる際には、プロジェクトと参加者双方の利害の一致を目指す必要があります。そのためには、インセンティブ設計が重要となります。
魅力的なインセンティブを得られるようにすると、DAOへの積極的に参加を促すことにつながります。
また、特定の参加者にのみ有利なプロジェクトが可決されたり、特定の参加者の投票が意思決定を左右したりといった事態は防がなければなりません。権力の集中が起きないガバナンスモデルの構築も大切です。DAOの本来の姿である、参加者の積極的な関与と公平な権力分散を目指しましょう。
なお、2024年4月1日施行の府令改正にて、合同会社型DAOの設立・登記が可能となりました。法人格が付与されるため、資金調達も行いやすくなると考えられます。しかし、ブロックチェーンやガバナンストークンに関する法規制はまだまだ発展段階にあります。最新の動向に常に注意を払い、ビジネスモデルが法的に適合していることを随時確認することをおすすめします。
【あわせて読みたい】
>> DAOのビジネスモデルを解説!Web3にフィットする実例と、DAO活用の魅力
>> DAOの作り方: 完全ガイド 2023(Decentralized Autonomous Organization: 分散型自律組織)
まとめ
ガバナンストークンを保有する大きな目的のひとつが、DAOの運営に関わる意思決定に参加することです。ガバナンストークンを持っていれば年齢や国籍を問わず、誰でも重要な決定の投票権を持つことができるのです。
さらに、取引により利益を生むこともできるなど、資産価値としての魅力もあります。
ガバナンストークンは国内の取引所で手軽に入手できるものもあるため、まずは関心のあるDAOのものを取得してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
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