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マーケティング施策の優先順位の付け方がわからない。
アレもコレも重要に見えるが、全部やるだけのリソースはない…。
そのような方に、マーケティング施策の予算策定や見込み成果を推計するためのシミュレーション方法について解説します。
- 目標設定の考え方
- 優先順位を付けるときのポイント
- 2つのシミュレーション例
- 効果的な施策を選ぶには
効率的なアプローチで、マーケティング施策の成果を最大化するための参考としてください。
この記事の目次
まずは目標を明確にする
まず、全ての道のりの第一歩は「目標をどこにおくか」を明確にすることです。
BtoBマーケティングは主に商談の獲得を最終目標としています。しかし、そこへ至る過程において、どのマーケティングファネルにリソースを割り当てるかが重要です。
目標設定の考え方:デジタルマーケティングの場合
デジタルマーケティング施策による商談獲得を例に挙げると、商談に至るまでには以下のような複数のステップがあります。
- Webサイトトラフィックの増加
- メールリストの拡大
- 資料のダウンロード促進
- インサイドセールスの強化
- メールマーケティングの最適化
- 問い合わせ数の増加
- 商談の設定
Webサイトにトラフィックはあるが資料ダウンロードへと繋がらない場合、訪問者が関心を持つページのトラフィックが不足している可能性があります。この際、対象となるページへのトラフィックを増やすために、ターゲット検索キーワードの再選定や検索順位の改善、デジタル広告を通じたトラフィックの確保などが必要です。
また、資料ダウンロードは目標を達成しているものの、問い合わせや商談への転換が低い場合、提供する資料の内容が顧客のニーズとマッチしていないことが考えられます。この問題を解決するためには、資料の内容を見直し、顧客のニーズに合致するよう調整することが重要です。
各ステップで期待される成果が得られていない場合、その原因を究明し、効果的な改善施策を実施する必要があります。このプロセスを通じて、マーケティング施策の予算策定と見込み成果の推計が可能となり、最終的な商談獲得につながる道を切り開くことができるのです。
施策に優先順位をつける
デジタル施策・対面施策の選び方
デジタルコンテンツの制作体制があり、コンテンツに自動的に集客・接客させる仕組みを構築したいと考える場合は、デジタル施策を優先すべきでしょう。
- Webサイトのトラフィック確保
- デジタルコンテンツ企画 など
一方、リアルな接客対応に強みがある人員が確保できるのであれば、対面施策が優先されるでしょう。直接顧客と接触できれば、ボトムファネルでの商談設定に至る可能性は高まります。
- セミナー・ウェビナー
- 展示会・イベントへの出展 など
強化するステップと経路の設定
デジタル施策を中心に商談獲得を目指す場合、マーケティングファネルは以下のステップを含む一連のプロセスを形成します。
- Webサイトトラフィックの増加
- 資料ダウンロードページへの誘導
- メールフォロー
- 問い合わせの促進
- 商談設定
- 契約の獲得
このプロセスのうち、どのステップ・チャネルを強化するかを設定します。施策の実行には、リソースの割り当てと時間軸の計画が必要になり、これらを適切に管理することが成功への鍵となります。
【具体例1】資料ダウンロードの媒体サイトへ出稿する場合
資料ダウンロード促進の短期的な強化策であるデジタル広告媒体やメディア媒体への出稿を例に挙げて、実際にシミュレーションをしてみましょう。
商談獲得コストと広告宣伝費の割合の計算
月間媒体出稿料200,000円で40件の資料ダウンロードがなされ、15件が商談化。単価1,000,000円で5件成約したとします。
項目 | 数値 |
月間媒体出稿料 | 200,000円 |
資料ダウンロード件数 | 40件 |
商談化件数 | 15件 |
成約件数 | 5件 |
成約単価 | 1,000,000円 |
商談獲得コストは 月間媒体出稿料 ÷ 商談化件数 ですので、約13,333円となります。
200,000円 ÷ 15件 =約13,333円/件
売上に対する広告宣伝費の割合は (月間媒体出稿料 ÷ 総売上) × 100 で割り出せるため、4%です。
(200,000円 ÷ 5,000,000円) × 100 = 4%
総コストを含めた広告宣伝費の割合の計算
資料ダウンロードの企画・制作自体にもコストがかかります。制作コストも広告宣伝費として加味するのであれば、以下のように計算できます。
項目 | 数値 |
資料制作コスト | 100,000円 |
総コスト (円) = 月間媒体出稿料 + 資料制作コスト
200,000円 + 100,000円 =300,000円
売上に対する広告宣伝費の割合 (%) = (総コスト ÷ 総売上) × 100
(300,000円 ÷ 5,000,000円) × 100 = 6%
制作コストも含めた広告宣伝費の割合は、6%です。
利益コスト率の計算
さらに、利益率からも考えてみましょう。1契約あたり利益率10%の事業と仮定した場合の計算は以下の通りです。
利益 (円) = 総売上 × 利益率
1,000,000円 × 5件 × 10% =500,000円
利益コスト率 (%) = (総コスト ÷ 利益) × 100
(300,000円 ÷ 500,000円) × 100 = 60%
利益を生み出すためにかかったコストの割合は、60%となります。
ROIの計算
仮に初月からこの利益成果を出せて、かつ12か月間この水準をキープできるとします。ダウンロード資料作成は最初の一度だけの場合は、以下のような計算式で年間のROIを推計できます。
年間ROI (%) = (ひと月あたりの総売上 × 12ヶ月) ÷ {(月間媒体出稿料 × 12ヶ月) + 資料制作費} × 100
(500,000円 × 12ヶ月) ÷ {(200,000円 × 12ヶ月) + 100,000円} × 100 = 240%
計算のポイント
年間を通じて成果もコストも一定とは限らず、季節やメンテナンスコストなどの変動要因を考慮することで、より精緻な推計が可能になります。また、媒体ごとの成約率やコストの違いについてのデータがあれば、さらに厳密な推計値を算出できます。
社内で蓄積した知見や情報収集したデータをもとにシミュレーションの精度を高めていきましょう。
【具体例2】Webトラフィック強化方法を選定する場合
次に、Webトラフィック強化施策のうち、広告経由とSEO対策経由ではどちらが効率の良い施策となるのかをシミュレーションしてみましょう。
広告施策のコスト推計
広告キャンペーンを実施する際、クリック単価(CPC)やインプレッション単価(CPM)などの指標を用いてトラフィック獲得のコストを推計することが可能です。
CPC = 広告費 ÷ クリックされた回数
CPM = 広告費 ÷ インプレッション数(広告の表示回数) × 1,000
また、CPMから逆算すれば、目標トラフィックボリュームを達成するために必要な広告費用を算出することもできます。
広告施策の課題
一方、広告キャンペーンには、必ずしも目標トラフィックを確実に獲得できるとは限らないという課題があります。広告インベントリ(広告在庫)の限界や、期間内に予算を完全に消化できない場合があるため、広告の品質スコアを高めるためのコンテンツ改善コストや、適切な出稿先メディアを選定する運用コストも考慮に入れる必要があります。
また、広告出稿を停止した瞬間にトラフィック獲得も止まってしまうという点は、中長期的な集客戦略を考える上で大きなデメリットとなり得ます。そのため、継続的なトラフィック流入を確保するためのコストが時間とともに膨らむ可能性があることを認識することが重要です。
SEO対策の重要性とコスト効率
近年、SEOは単なるリンクやキーワードの最適化を超え、高品質なコンテンツによる情報提供の重要性が高まっています。特に、競合が少ないニッチな領域では、少量のコンテンツでも高い検索順位を獲得し、広告を使わずにオーガニックトラフィックを集めることが可能です。
競争が激しい分野では、単に情報が豊富なだけでなく、独自性やユーザーの多様な情報ニーズに対応した質の高いページを提供することが求められます。これには、ページ間の相互リンクを含むサイト全体の構造最適化も含まれます。
中長期的には、SEOコンテンツ(記事やWebページ)の方が広告出稿よりも低コストで集客できるでしょう。また、自然検索による集客は、広告出稿よりも問い合わせ獲得率の高い(確度が高い)流入を獲得しやすいとされます。
コンテンツ制作体制が確保できる、または1−2年という比較的長いスパンでの施策実行を構想できる場合は、SEOへの注力が有効かもしれません。
SEOコンテンツ制作のコストシミュレーション
コンテンツ制作のコストは、以下のプロセスに必要な工数と関連コストをもとにシミュレーションできます。
- ターゲットキーワード選定
- 競合分析
- 目次設計
- 初稿作成
- コンテンツ分析(デジタルツール利用)
- コンテンツブラッシュアップ
- 記事リリース
- リリース後のリライト
- コンテンツメンテナンス
これらのプロセスにかかる総工数に、人件費、ツール利用コスト、場合によってはWebサイトのCMS開発や保守運用費用を加えることで、月間のコンテンツリリースコストを見積もることができます。
Submarineのシミュレーション方法
弊社では、初期段階の3ヶ月で、目標とする15本の記事リリースを計画しています。続く3ヶ月間では、これらのコンテンツの効果を高めるためにリライト作業を行い、約半年で目指す集客ボリュームに到達することを目標としています。このアプローチにより、制作コストとそれに見合ったトラフィック獲得量の推計が可能となるのです。
コスト推計と効率性の分析
SEO対策は中長期にわたります。当然、制作コストや獲得トラフィック量も一定ではありません。
弊社では、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月という異なる時間軸での制作コストと獲得トラフィック量を分析することにより、トラフィック獲得コストを推計します。
この推計データを、デジタル広告の出稿費用や、異なるコンテンツ領域での競合状況に応じたコンテンツ制作の負担と比較することで、各施策のコスト効率を評価しています。
参入領域の選定基準
コスト効率を高めるうえで、参入市場の選定は非常に重要です。
有望な市場領域を特定し、競合の状況を考慮した上で、どの領域に参入するかを決定します。トラフィック獲得コストの試算を行うことで、戦略的に有利なポジションを確保し、効率的な集客基盤を構築するための基準を確立しています。
これらの判断を可能にしているのは長年のコンテンツ制作経験によるところではありますが、成果につながる戦略策定のためには、市場や競合の分析、そしてコストシミュレーションは不可欠なのです。
マーケティング戦略の効果的な実行と施策選択
BtoBマーケティングにおいて、複数のチャネルを駆使した施策計画の比較と整理は、成功への鍵を握ります。施策コストの推計とその実行は、深いノウハウと経験が重要な役割を果たします。
施策実行の負担推計
マーケティング施策の選択肢には、SNS、オーガニック検索、YouTube、広告、展示会・セミナー、ウェビナー、媒体出稿などがあります。これらの施策実行の負担を評価する際、以下の点を考慮します。
- 施策実行コスト(人員コストや広告コストを含む)
- 施策実行までの時間
- 成果獲得までの時間
- 施策成果の持続性(メンテナンスコスト)
- 獲得リストの商談化率(コンバージョンレート)
- 効果的な施策の選定
最適な施策を見つけるためには、まず組織が得意とするいくつかの施策を選択し、施策を実行するサイクルを確立することが重要です。施策によっては、戦略の立て方、必要なスキルセット、人員配置が大きく異なるため、自社のリソースと相性の良い施策を見極めることが効率的なアプローチとなります。
組織特性と施策の相性
コンテンツマーケティングが得意なチームがイベント出展やインサイドセールスに苦手意識を持つケースがあるように、組織ごとの特性とマーケティング施策の相性を考慮することも重要です。コストパフォーマンスだけではなく、チームの得意分野や施策への適性も重要な判断基準となります。
まとめ
施策原価の厳密な把握は大切なことです。異なる施策間でのコスト効率比較だけに使うのではなく、同じ施策内でも「どこへ焦点を絞るか」の判断にも活かすことで、さらなる成果の最大化につながると考えています。
最終的には、組織の強みを活かし、効率的かつ効果的なマーケティング施策を選択し、実行することが、成功につながる道です。注力すべき領域や媒体を判断するために、本記事で紹介したシミュレーション例をお役立てください。
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