マーケティング・ファネルの基礎と種類

今回のテーマは、集客のプロセスを考える上で欠かせない、マーケティングの基本となる概念のひとつ『ファネル』についてです。改めて基礎的なところから振り返りをしてみたいと思います。

今更聞けない「ファネル」の基礎の基礎 

みなさんはご自身のビジネスにおいて、KPIを設定していると思います。一般的なマーケティングの手法として、KPIを達成するためのプロセスを、ファネルというフレームワークあてはめて考えることがあります。

「ファネル」は、アメリカの経営者やマーケターの会話では必ず出てくる単語です。ビジネスの売り上げを伸ばすために不可欠な、基礎なのです。


ファネルとは

ファネルは本来、漏斗(じょうご)という意味を持つ言葉です。漏斗とは、理科の実験で口の小さな容器に液体を注ぐ時に使う道具です。

「ファネルは漏斗です」と言われても、料理や化学の実験などをする方でないとピンとこないかもしれません。

マーケティングの世界で「ファネル」といえば、広く集客した顧客の数が、徐々に小さくなり、最終的に最小限に絞られた層が購入する図をイメージする人が多いでしょう。しかし、果たしてそれだけでしょうか。


今回は、ファネルの概要から、EC向け・オンライン向け・BtoB向けなど、様々な切り口からファネルの役割を解説します。


商品購入までの道のりの複雑さ

マーケティングの世界では、消費者が購入に至るまでに、多くの段階を踏みます。

まず、消費者にブランドを認知してもらうために広告を打つ段階。次に、消費者にブランドの魅力を感じてもらう段階。マーケターは様々な方法やコンテンツを駆使し、消費者の興味をかきたてます。そして最後は、「買ってもいいな」と思わせ、サイトから商品を購入してもらう段階。

購入までの道のりの長さは、業種によって違いがあります。ディーラーで車を買う場合、2~3年はかかることもありますが、ECサイトでサプリを買うなら一瞬で済みます。単価が高ければ高いほど、消費者は慎重になるようです。

また、商品には一人で買って、一人で使うものもあれば、家族で買って、みんなで使うものもあります。意志決定者が一人か複数かという違いによっても、購入プロセスは異なります。


「とりあえず」のマーケティングが浸透する日本の現状

日本では必ずしもすべての企業がファネルという概念を利用し、しっかりとフレームワークを設計しているわけではありません。

的確なフレームワークに落とし込み、目標数値を出し、目標に向けて広告を出して行く企業がある一方で、計画的なマーケティングができていない企業も多く見られます。

とりあえず集客のために広告を打ち、説明会を開く…。結果、開催企業が接点を持ちたい顧客の情報を得られなかった、という話はよく聞かれます。


データを活用しきれない、「マーケティング先進国」アメリカの実情

アメリカでは、特にオンラインに特化して起業する方達には、ファネルという概念は浸透しています。ただ、ビジネスを分析することはできても、その先になかなか進めないということをよく聞きます。

例えば「GAは使っているけれど、トラフィックと売上しか見ていない」というような状況です。

ファネルは見ているし、その先の戦略的な集客のトラフィックのボリュームは持っていたい。しかし、エンゲージメントやナーチャリングの部分では、顧客との接点を持つ、さらにディープなファネルの、真ん中の部分が抜けているのです。

ECサイトのファネルをBtoBで適用しようとする際の概念の壁や、オフラインにはオンラインのファネルが効かない、と言う話もよく耳にします。事業を拡大しようという意識は高いのに、ディテールが抜けているようです。

また、「あなたの業界はEコマースだから、このファネル。ネジ屋さんには、このファネル」というような設定は、あまりありません。集客において大変なポイントは、経営者やマーケターが個別に考え、ツールを設定・調整しなくてはならないことです。


ビジネスモデルごとのファネルの概念

アメリカのオンラインに特化した企業家にとっては、ファネルという概念は一般的です。しかし、BtoB・BtoC・オフライン・オンライン・飲食業など、適用するビジネスモデルの形態によっての使い分けができていません。

先日、HBR(Harvard Business Review)の記事に「多くの大手企業は、すでに解析はしてるが、データドリブンに関しては満足の域に達していない」という一説がありました。アメリカでは、解析しようとする意識は高いけれど、まだまだ的確なデータドリブンが行われてはいないということです。

マーケティング支援会社は顧客に、Googleアナリティクスの使い方を教えるなど、数値の見える化をするのは常識になっている。しかし、数値の見える化をすることが目的になり、見える化した後の次の一手までを見据えた支援をしている企業は、少ないように感じています。


Eコマースファネルの細分化

アメリカでは、Eコマースのファネルは、日本でもよく使うAIDAに当てはめられるかがポイントでした。しかし最近では消費者の購買までの道のりを、TOFU(Top of funnel/トーフ)・MOFU(Middle of funnel/モーフ)・BOFU(Bottom of funnel/ボーフ)と呼ばれる三つの期間に分けて考える概念が、広く使われるようになってきました。

TOFUとは

TOFUは認知度を上げるためのファネルです。

MOFUとは

MOFUはエンゲージメントを高めるためのファネルです。

BOFUとは

BOFUはコンバージョンのためのファネルです。

TOFUの段階では、ブログやSNSなど、リードを獲得する前段階のマーケティングを獲得するなど、近年しっかりと細分化して考える習慣がついてきたようです。


マーケティングファネルの理想形

ファネルは購入の段階では終わりません。砂時計のように、購入後もファネルは続きます。顧客を獲得した後は、顧客をブランドのファンに育てるフェーズです。

AmazonやGoogleは、プライムメンバーを獲得するために、大量の広告を出しました。その結果、多くのプライムメンバーを獲得し、ロックオンされた状態の顧客が、自然とAmazonやGoogleで買い物をする流れを生み出しました。当然、リピーターも出てくるので、リピーター向けのファネルもあります。

しかし、一般的なECサイトのファネルは、途中で途切れてしまうことがよく起こります。ファネルというと下に落ちるのがゴールと思われがちですが、そうではありません。

理想のマーケティングは、広告を打たずとも、顧客が自発的に求め、戻ってくるのが理想です。一種のCRMを構築する必要があるでしょう。

そのため、流しっぱなしのファネルではなく、砂が反対側に積み重なっていく砂時計のイメージが合うんです。


的確なファネル設計と見るべき指標

では、砂時計ファネルの概念を、具体例も交えてざっくりと説明します。

AIDA(態度変容プロセス)と見るべき指標

・アッパーファネル(ファネルの初期段階)

集客のために広告を出したり、Googleアナリティクスのトラフィックや、商品ページの閲覧数、広告に対するクリック率などのデータを見ます。

・ミドルファネル(ファネルの中盤)

何が購入カゴに入ったのか、ニュースレターを見てくれたのか、サイトから直帰しないでキープして何回も商品ページに来たのかなどを見ます。

・ローワーファネル(ファネルの最終段階)

商品をお客さんがポチッと購入してくれた瞬間に、訪問客は顧客になります。その後、顧客情報をCRMに流し、トランザクションや売り上げ額などのデータ見ます。

リピートバイヤーやブランドのファンになる段階では、多くのマーケターはLTV(Life Time Value)を重視します。

例えば、1回目の購入額は100ドルでも、その後3~4回100ドルずつ購入すると、LTVは400〜500ドル買ってくれる顧客になる。多くのブランドは最終的に顧客をファンに変えたいため、購入者がリピートバイヤーになる確率を知るためにNPSを見たりします。


マーケティングファネルで、アウェアネス・インタレスト・ディザイア・アクションの4つのそれぞれで、見るべき指標があります。それは、Googleアナリティクスのステーションやカゴ落ちしているものなど、様々です。いつどの指標を見るかをファネルで設計することで、目標達成への手段がより明確になります。


検索エンジンによる集客が契約に結びつかない、不動産業者の苦悩 

デジタル・マーケティングの失敗例

とても興味深い実例があります。

不動産業を営むAさんは不動産検索ポータルサイトに広告費を払い、自分で取り扱っている物件を掲載しています。

しかし、成果が上がらない。ポータルサイトに掲載するために多額の広告宣伝費がかかる上に、発見されやすくするためには、さらにオプション費を払わなくてはならない。

問い合わせが来ても、彼らは他の不動産サイトへも同時アクセスをしていたりして、連絡が途絶えてしまうこともある。

Aさんは、集客がうまくいかない原因は、ポータルサイトにあると思っているようでした。

しかし、ポータルサイトは集客が目的であり、そこから先のディザイア・インタレスト・アクションに結びつけるためには、また別なアクションが必要です。その認識が、Aさんには足りなかったのかもしれません。


ファネルの整備不良

このAさんの事例は、デジタルマーケティングがうまくいかない一つのパターンだと思います。ファネルごとに戦略立てて、そこで終わってる戦略なのでしょう。

トラフィックは、お金を払えば、いくらでも得られます。ポイントは、価値のあるトラフィックを把握し、そこだけに集中的にお金を注ぎこめるかどうかにあります。

大企業は認知度に大金を投資できますが、中小企業ではそうはいかない。しかし、集客しなければ競争力が落ちるなどの不安が出てきます。

この場合、ファネルの問題ではなくて、ビジネスの問題ですよね。


施策不足

「広告を出して訪問数が増えれば、あなたのビジネスがうまくいく!」などの謳い文句を信じ、広告を出す。しかしその行為は、自分のビジネスで設定されたファネルのどの部分に当てはまるのかを、一度立ち止まり、自らに問い直すべきです。

その結果、広告はセッションを集めるには役に立つけれど、デザイア・アクションの部分には、また別のアプローチが必要なので、あまり役に立たないと判断することもあるでしょう。その場合、広告予算の100%を使うのではなく、一部を使うという手段もある。

予算だけを消費し、思った通りの成果を得られずに枯渇するのは避けたいところです。


データの欠落

ファネルやビジネスの問題以外にも、データが途中で消えてしまうこともあります。

例えば不動産屋さんに行って、契約するまでの期間はとても長い。その間に顧客は、ネットの情報やパンフレット、他の不動産屋に行くなど、様々な情報に触れます。自社のサイトを見てくれたからといって、契約までの顧客の完璧な動向データーが取れているわけではありません。ファネルに描いたからといって、全部のデータが見てくるわけではないんです。

これこそが、「漏斗の穴」と言えるのではないでしょうか。


BtoBマーケティングのアプローチ

BtoBの業界ではBtoCとはアプローチが全く違います。マーケティングの予算も、企業によっては何億という金額にのぼります。

では、このBtoBのマーケティングは、どのようなものでしょう。

BtoBの取引では、取引先の再購入やクロスセルなど、トラフィックにお金を払わなくても、既存のトラフィックを生かせることが多くあります。

BtoBの取引の流れを、車のパーツを作っている企業を例にして説明しましょう。

  • STEP1

まず見込み客を、パーツを購入しそうな工場やメーカーの営業に決める。

  • STEP2

営業の方々に、実際の制作現場を見てもらう。また彼らが帰社後、社内で会話のきっかけになるような資料を作成し、見てもらう。

  • STEP3

ファネルのアカウント中の顧客リストを1人から5人に増やす一方で、決済担当者の名前を獲得し、商談に持ち込む。

  • STEP4

商談。単価のボリュームを厚くするなどし、契約に結びつける。

このように、営業を起点として、上司につながるようなファネルを設定します。

ECサイトとBtoB、ファネルが全然違うのがわかりますよね。ECサイトなどのファネルは、アウェアネス・インタレスト・ディザイアでした。しかしBtoBでは、一番最初の担当者・その上の上司・一番最後の決済担当者というファネルを設定します。

そして、ファネルを推進して行くための戦略的ツールとして、上司と担当者が話す際に役に立つような資料を、こちらから主体的に提供する。資料は、顧客に「ちょっと欲しいかも」と思わせ、まだ顕在化してないニーズも掘り起こせるかもしれない重要なアイテムです。上司と話すことによって、他の企業と取引していても、自分の方で検討してもいいかなという、きっかけになるかもしれません。


馴染みのない企業のCMは、いったい誰のためにあるのか

日本のテレビを見ていると「〇〇製造」とか「〇〇ケミカル」など、自分とは全く関係のないコマーシャルが出てきますよね。アメリカでは、大手企業のBtoBの広告はありません。

このような広告は、BtoBで何かを売るためというよりは、ビジネスパーソンが取引先との会話で「この間、デレビコマーシャルを流してましたね」などと、話題にするためなのではないでしょうか。

ファネルのトップのボリュームを狙ってるわけでなくて、実はミドルファネル。この企業はテレビで広告出してる、という社会的信頼を勝ち得るための広告であると思っています。

資料の豪華版、というところでしょうか。

同じ資料でも、世間で話題になっているものを読むのと、そうでないものでは、印象の残り方が全然違います。誰かにシェアしたくなる熱量も違ってくる。その熱量を得るための広告を打っている。実は、一般消費者ではなく、世間の話題を得るために広告を打っているということです。

このような広告の打ち方の成否はわかりません。しかし、フェネルのどこをどう狙うかの、BtoBとBtoCの違いを表すための良い例だと思います。


近年アメリカで急成長を見せる、BtoBのデジタルマーケティング

アメリカのデジタルマーケティングの分野では、多くのBtoBのアプローチ方法が使われていますが、多くの日本のマーケターはまだ活かせていません。

特に、デジタルの分野でのBtoBのアプローチは、日本ではまだ一般的ではありません。

その理由は、アメリカで開発されたBtoBのデジタルマーケティング自体が、新しいものだから。

最近、セールスフォースやオラクルなどの開発した、営業支援のための管理システムが伸びています。さらに、その周辺のプラットフォームや、マーケティングファネル解析、デジタルマーケティング・アトリビューションの計測、サードパーティのプラグインがセールスにつながるエコシステムの売行きも好調です。

しかしシステムが確立されたのは、この5~7年のこと。このようなシステムは、アメリカのマーケットで普及してから、世界へ広がるのが一般的です。アメリカでも動き出したばかりのBtoBのデジタルマーケティング。今後の日本での広がりに期待したいです。


日本とアメリカ、それぞれの課題とは

今、日本では営業支援のための管理システムなどのプラットフォームを導入する段階なのかもしれません。しかし導入後に、「入れたは良いけど、結局どうするんだっけ?」という議論が、必ず持ち上がります。

本来営業支援システムは、マーケティングの目的ではなく、手段です。導入したシステムがうまくいかないの時は、ファネルに立ち返る時なのかもしれません。

アメリカのデジタルマーケティングの現状は、一見、プラットフォームやツールのチャレンジのように聞こえますが、全く違います。

EコマースやBtoCのフレームワークが巷にありすぎて、TOFU・MOFU・BOFUと言えば、「ああ、サイト見て、商品持ってきて、カゴに入れることでしょ」と、一般的です。

しかし、BtoBのトピックになると、ファネルはいかようにも描けます。何をリード獲得のための施策にするのか、ロジックやスコアリング、階層のわけ方など、会社によって違うため複雑になってきます。

そのため、デジタルマーケティングのプラットフォームが、浸透しても様々な問題が発生します。

解析はするけれど、会社の定義やファネルの定義を設計した時に、セールスシーンのマーケティングチームによって言葉が違ったり、見ているファネルがずれてたり、その時点でマーケターが使っているツールをセールスマンが使っていなかったりという問題は、必ず出てくるでしょう。

日本のマーケティングに対するアプローチもまだまだという一方、アメリカでも課題はあります。

やはり普遍的な課題は解いて行くための、何らかの施策案を考えて行くことが、中小企業の経営者にとって、大きな課題になって行く印象を改めて持ちました。

冒頭でも話に出た通り、ファネルというテーマはビジネスモデルによって差異が大きい。今後オンライン・BtoB・BtoCなど、個々の切り口で、掘り下げる回を用意したいと思います。

この記事を書いた人

曽志崎 寛人
合同会社Submarine

音声ポッドキャストの制作サービス支援 「PROPO.FM」を企画・運営。2012年より外資企業でシステム開発でプロジェクト管理の業務経験を積み、2016年よりベンチャー企業でWebメディアの企画・立ち上げを経験。2018年より合同会社Submarineを設立。現在は、ポッドキャスト制作・Webクリエイティブ・デジタル施策のサービスを展開。

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